飲食店にとって、「忘れ物」は切っても切れない問題です。アルコールの取り扱いがあるお店では、とくに顕著となります。
また忘れ物に関しては、トラブルがつきものです。対応を間違えてトラブルに発展してしまうと、損害賠償を請求されたり店舗の評判が悪くなったりと、経営上大きな影響を受けてしまうかもしれません。
忘れ物に対して、店舗側ではどういった対処をするべきなのでしょうか?
この記事では、お客さまが忘れ物をした際の対処法と忘れ物の管理方法、トラブルの事例、忘れ物の予防法について詳しく説明しています。
「お客様の忘れ物を減らしてトラブルを回避したい」とお考えの方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
お客さまが忘れ物をした際の対処法
忘れ物に関しては「遺失物法」という法律があり、忘れ物は遺失者に返還または警察に届けるという決まりがあります。
■遺失物法(拾得者の義務)
第四条 拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。
引用元:
遺失物法
第四条 拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。
この内容を踏まえて、下記のように対応するとよいでしょう。
店舗にて保管する
お客さまの忘れ物は店舗に連絡が来る可能性があるため、すぐに警察へ持ち込まず店舗にて一時的に保管しておきましょう。
また忘れ物の内容で判断せず、小さな物でもすべて処分せず保管しておくようにします。
たとえばレシート、ポケットティッシュ、マスクなど判断に困るものは、不要と判断して廃棄したくなるかもしれません。しかし、物の価値はお客さまが決めることです。
勝手な判断で処分してしまった場合、取り返しのつかないクレームにつながる恐れがあります。
どのようなものでも必ず店舗にて保管しておくのが、基本的な対応となります。
ただし財布や携帯電話などの貴重品、貴金属など明らかに高価なもの、犯罪にかかわっていそうなものについては例外。
店舗で長時間管理せずに、見つけ次第すみやかに警察へ連絡しましょう。
警察へ届ける
店舗にて保管していた忘れ物は、最終的に警察へ届けるようにします。保管の目安は1週間程度としておけば問題ありません。
引き取りの連絡がないからといって店舗で勝手に処分してしまうと、トラブルになる可能性があります。そのリスクを避けるために、面倒でも警察へ届けるようにしましょう。
店舗側でどの警察にいつどのようなものを届けたのかわかるようにリスト化しておけば、警察へ届けたあとお客さまから連絡があった際にスムーズに対応できます。
※平成19年12月10日に遺失物法が下記のとおり改正されました。
- 遺失物の保管期間が6か月から3か月に変更
- 遺失物の情報をインターネットで公開
- 個人情報が入った物の所有権は拾得者には移らない
- 特例施設占有者制度が新設
- 2週間以内に落とし主が見つからない場合、大量&安価な物は売却処分可能
参照元:https://www.npa.go.jp/safetylife/chiiki2/summary2.pdf(警視庁ホームページ)
忘れ物の取り扱いと管理方法
店舗で忘れ物があった際に、どのように取り扱いをするか決めておくとよいでしょう。
対応をマニュアル化しておく
店内の忘れ物に関しては、取り扱い方法についてマニュアル化しておくのをおすすめします。
- いつ誰がどこで拾ったか
- どういった状態で忘れられていたか
- 見つけた際はどう対処するか
- お客さまから連絡があったらどう対応するか
これらをマニュアル化して従業員に周知させておくことで、意思の疎通や情報共有もスムーズになるため、忘れ物の管理がしやすくなります。
中身にはできるだけ触らない
忘れ物を発見した際は、中身には触らないようにします。財布や携帯電話など、中身を見れば持ち主がわかるケースも考えられるでしょう。
しかし、中身を見たことによって起きるトラブルの方が大きな問題となります。
トラブルを未然に防ぐためには、決して中身には触らないようにするのが鉄則です。
決まった場所で管理する
忘れ物に関しては管理する場所を決め、そこで一括管理するのがよい方法です。
管理する場所はたとえば従業員休憩室など、従業員以外の目に入らない場所にすると盗難の危険性が減り安全です。
管理場所を決めておくことで、どの従業員でも忘れ物の問い合わせがあった際に対応できます。
また、現金が入ったお財布やキャッシュカード・クレジットカードなどは、とくに扱いには気をつけましょう。鍵つきの保管箱や金庫などを利用し、アルバイトではなく管理者が保管しておくことをおすすめします。
保管する際は、汚れたり破損したりすることのないような管理方法を取りましょう。
忘れ物がトラブルになる事例
忘れ物が原因で、お客さまとトラブルになるケースは数多くあります。
代表的なものだと、「誤って処分した」「別のお客様に渡した」「従業員が持ち帰った」などがあります。
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誤って処分した
従業員が誤って処分してしまうのが、一番多いトラブルの原因となります。
「ゴミと間違えて捨てた」「忘れ物の管理がずさんでどこへ置いたかわからない」など、店舗側の問題で紛失してしまうケースです。
店舗側では不要物と判断しても、お客さまからすれば重要なものであるかもしれません。忘れ物を紛失した場合は損害賠償の対象となり、店舗の悪評にも直結します。
店舗側の勝手な判断はすべてトラブルにつながると心得て、細心の注意を払って管理するのが大切です。
別のお客さまに渡した
「相手をよく確認せずに、別のお客さまへ渡してしまった」というのも、よくある事例です。
個人が特定できるようなものを別のお客さまに渡してしまうと、最悪の場合は犯罪につながることも考えられます。
忘れ物を引き渡しする際は、本人が特定できるような対策をしておきます。
- 忘れ物の特徴を詳しく聞き出す
- 住所、氏名、連絡先をもらう
- 受領のサインを必ずしてもらう
上記のように、きっちりとした取り決めをしておき、内容を遵守するのが重要です。
従業員が持って帰った
「従業員が持ち出してしまった」という事例もあります。
「従業員が故意に持ち去る」というのは窃盗であり、弁解の余地はありません。
しかし「警察へ届けようとして持ち出したが届けるのを忘れていた」というケースもあるでしょう。
たとえ故意ではないとしても、勝手に自宅へ持ち帰ったという状況であれば窃盗に問われることがあります。
忘れ物の管理は店舗でも責任のある人間が管理し、誤って持ち帰るようなことが決してないようにしなければなりません。
忘れ物を予防するには
お客さまの忘れ物を予防するために、店舗側でもできる対策を打っておくとよいでしょう。
いずれもそれほど大変なことではなく、オペレーションにすぐにでも取り入れられるはずです。ぜひ実行してみるのをおすすめします。
テーブル上の確認
接客時には、テーブルの上にどのようなものが置かれているかあらかじめ見ておきます。携帯電話や財布など、忘れ物となりそうなものがないか確認しておきましょう。
ただし、失礼にあたるほど凝視するのは厳禁です。
レジでの声掛け
レジで会計の際に声掛けするのも有効です。「お忘れ物はございませんか?」この一言があるだけで、かなり忘れ物を減らす効果が見込めます。
店内への掲示
携帯電話や傘などを、出入口やトイレに置きっぱなしという状況がよくあります。出入口やトイレにチラシやポスターを貼って注意喚起すると、その場所での忘れ物を確実に減らせます。
あまりにもベタベタとたくさん貼ってあると、見た目が下品になるので注意が必要です。
まとめ
お客様の忘れ物は、飲食店では切っても切れない問題です。忘れ物に関しては、店側での勝手な判断はすべてトラブルへと直結します。
逆にお客様の立場となって忘れ物の対応をすれば、店舗のファンとなってもらえる可能性が高まります。
忘れ物に対しては決して適当な対処をせず、きっちりとした対応が必須です。
店舗だけで解決できなければ警察に介入してもらうなど、店側での管理を十分に考えておきましょう。