独立や新規出店を検討している個人事業主や法人に向けて、飲食店の独立・開業で成功している経営者にインタビューを行う当コーナー。
第二回は目黒区を中心にバーチャルレストランの運営やサポート事業を展開している『YO-PLUS株式会社』の代表『小原秀樹』様にインタビュー。
コロナ禍以前からテイクアウト・デリバリーに着目したきっかけと、同事業の今後の展望などを伺います。
【小原 英樹 様 プロフィール】
出身地である京都で飲食店舗を経営。30歳を迎えた2002年に海外での出店を視野に入れ、東京へ。目黒区で7坪7席の鉄板焼店「時代家 旬」を開業。2011年に中国・北京に出店し、念願だった海外進出を果たすも、2013年に同国の政権交代の影響を受けて撤退する。2016年、都市開発によって「時代家 旬」を目黒から自由が丘へ移転。外的要因に左右される従来の飲食業態の在り方に疑問を感じ、単身渡米。ニューヨークで来店店舗を持たないゴーストレストランに感銘を受け、日本での展開を決意した。2018年、目黒区でバーチャルレストランを開店。現在は目黒店、五反田店、中野店の運営と、これからバーチャルレストランを始める人に向けたサポートを手がける「VRLab」事業を展開している。
コロナ禍以前からデリバリーに着目し、プロダクトを創り上げる
編集者
今でこそコロナ禍でデリバリーのニーズが高まり、参入が増えているバーチャルレストラン(ゴーストレストラン)事業ですが、小原さんはコロナ禍以前の2018年に始めています。 まさに先駆者と言えますが、この事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
小原
さんもともと私も飲食店をやっていて、開業や閉業、移転などを経験してきました。 その中で、店内飲食のみの業態では、店長が変われば売上が変わる。スタッフを入れれば教育に時間がかかる、立地や天候といった外的要因でも、客足が左右されるといった、不確定要素が多すぎること。 そのうえ、人口密度に対して店舗が多いため、お客さまの奪い合いになる可能性が高い。 そういったことを考えると、長期的に続けていくのは難しいなと思ったんです。 そこで、何か新しいビジネスのヒントがないかと考えてニューヨークへ渡ってみました。
編集者
そこで、バーチャルレストランを知ったのですか?
小原
さんどちらかというと、知ったのはUber Eatsやフードデリバリーの仕組みですね。 滞在中は、朝・昼・晩とほぼ毎食デリバリーを頼んでいたのですが、当時その仕組みを知らずに、届けてくれる配達員が毎回違うことがすごく不思議で。 「このレストランは、いったい何人の配達員を使っているんだろう?」と、配達員の後をついていったんです。 すると、彼は複数の店舗の品を配達していた。 俄然興味が湧いて訊ねてみると、「自分は特定の店舗に専属はしておらず、デリバリーのシェアリングサービスで、マッチングした店の配達をその都度、担当している」と。 「これを日本でやろう!」と思い、Uber Eatsに問い合わせをしました。
編集者
その頃は、日本に上陸前だったかと思うのですが、すぐに始めることができたのでしょうか?
小原
さんはい。ちょうどUber Eatsは日本進出の予定があったようで、帰国後すぐに声がかかり、自分の経営する店舗でテイクアウト・デリバリーを始めることができました。が、当時は今ほどニーズがなかったので、ほとんどオーダーは入りません。 それどころか、周囲から奇異の目で見られるほど。 そんなとき、Uber Eats本部から研修があると連絡が入り、再びアメリカに渡りました。 研究で行ったのは、客席のないデリバリーのみで商品を販売する店。 大きな体育館のような空間にいくつもの厨房があり、複数の業態が営業している。そこに調理器具も食材も全て用意されていて、オーダーが入ったら作るだけ。スタッフは仕事が終わったらそのまま帰れるスタイル。 参入や撤退も簡単で、なんて合理的なんだ、と思いました。
編集者
まさに、今でいうゴーストレストランの原型ですね。
小原
さん帰国後、すでに運営していた路面店で通常の店内営業に加えてデリバリーに取り組んだのと、新たに空中階にゴーストレストランも出店し、どちらの方がより利益が出るのか実験してみました。 すると、純利益として多くお金が残ったのは空中階の方だったんです。 路面は店内&デリバリーの2本柱ではありましたが、それ以上にデリバリーのみの空中階の方が、売上に対して家賃や人件費が抑えられていることが主な要因でした。 これはビジネスモデルとして広げられると確信し、これから展開しようと動いていたときに、コロナ禍となり、それが追い風になり一気に売上が伸びましたね。
成功のカギはデータ。顧客のニーズを汲み取り、メニューに反映する
編集者
デリバリーを始めた飲食店も多いと思いますが、成功するために重要なことはどのようなことでしょう?
小原
さんデリバリーでは「店が売りたいものを売る」のではなく、「お客さまが欲しいものを売る」ということが重要です。 地域によってどのような業態が売れているのか。時間帯ごとの単価はどのように違うのか。 そういったデータをもとにして、出すべき商品を決めると良いと思います。これが通常の飲食店と大きく異なる点です。
編集者
一方で、これから飲食店を始める人はそういったデータを持っていない。だから、小原さんは先駆者として蓄積してきたデータをもとに、「VRLab」事業でデリバリーを始める人のサポートをしていくのですね。
小原
さんその通りです。飲食店経営者は「自分だけのオリジナル料理を食べてもらいたい」という考えの方が多い。 そういった想いに並走し、蓄積したデータと自社セントラルキッチンを用いて「売れるオリジナル商品」の開発をサポートしていければと思います。 飲食店のトレンドは目まぐるしく、類似する業態や店舗が非常に多い。 その中で、誰に・何を・どのように届けていくのかを、データなしで考えていくのは至難の業です。 弊社の蓄積してきたデータは、きっとお役に立てることでしょう。
新規出店の難度は上昇。今後は体験価値の創出が命運を握る
編集者
デリバリー業態の今後はどのように考えておられますか?
小原
さんデリバリーの業態が爆発的に増えた今、新規事業として成功させるための難度は上がったと感じています。 それに加えて、コロナ禍でお客さまの価値観も多様に変化している。 従来の飲食店のように味や量、値段だけでは勝つことができません。 例えば、SNSでの話題性や、映像によるライブ感といった、料理以外の体験価値をどのように付加するかが、今後の課題となるでしょう。 また、バーチャルレストランで開発・販売し、売上が良さそうならば実店舗で始めるといったように、テイクアウト・デリバリーを自社製品のテストマーケティングとして使う方法もアリだと思います。
編集者
小原さん自身、色々なことを試していく考えでしょうか?小原さん自身、色々なことを試していく考えでしょうか?
小原
さんはい、そのつもりです。 今後、弊社も成功事例を増やし、その知見をサポート事業に活かして相談者さまに還元していければと考えております。
【Uber Eatsの正規代理店がスピード出店をサポート】
https://www.yo-plus.jp/lp-delivery/