飲食店を始めて稼ぎたいと思った場合、つい売上を向上させることばかりに目を向けてしまいがちですが、出ていくお金である「経費」を抑えることも大切です。
飲食店を運営する上でかかる経費を削減する方法はいくつかありますが、中でも経費の削減効果が高く目を向けるべきとされているのが「原価率」です。
この記事では、飲食店の原価率について紹介していきます。
- 原価率の概要
- 原価率に対する基本的な考え方
- 原価率を抑える方法
についても解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
原価率とは
原価率とは、商品を販売する際の販売価格において原価が占める割合を指す言葉です。
この言葉はどの業界でも用いられる言葉ですが、飲食店の場合、提供するメニューを作るのにかかった材料費を元に原価率を算出します。
例えば、最近人気が高まってきているバナナジュースをお客さんに提供する場合、バナナジュースを作るのに使用したバナナや砂糖などの材料を元に原価率を算出します。
原価率が低ければ低いほど飲食店側の利益が多くなるため、飲食店の経営において原価率は非常に重要な指標となるのです。
飲食店の原価率の計算方法
飲食店の収益は提供するメニューの原価率に左右されるため、メニューを考えるときには原価率を確認しながら考える必要があります。
そこで把握しておかなくてはいけないのが、原価率の算出方法です。
原価率は、「原価(材料費)÷提供価格(販売価格)×100」で求めることができます。
例えば、1,500円で提供しているステーキを作るための材料費が500円だったとしましょう。
その場合の計算式は「500(原価)÷1500(販売価格)×100」となり、原価率は約33%になります。
このように原価率は簡単に求めることができ、飲食店を成功させる上で非常に重要な指標になるため、メニューを考えるときは原価率をしっかりと算出した上で考案しましょう。
飲食店における原価率の考え方
原価率を抑えて店舗の売上を向上させるためには、原価率に関する基本的な考え方を把握しておかなくてはいけません。
飲食店の経営者が把握しておくべき原価率に関する基本的な考え方として、以下の5点があげられます。
- 飲食店における原価率の目安は30%
- 原価率の高い食べ物と低い食べ物がある
- 原価率とあわせてロス率も把握しておく
- FLコストの把握も必要
- 各食材の歩留まりを把握しておく
それぞれ詳しく解説していきます。
飲食店における原価率の目安は30%
メニューを開発するときに考慮しなくてはいけない原価率ですが、飲食店における原価率の目安は30%ほどが理想とされています。
原価率は低ければ低いほど良いとされていますが、原価率を下げることばかりに捉われると提供する商品の質が落ちてしまいかねません。
原価率は取り扱う商品によって異なるため、一概に30%を目指すべきとは言えませんが、一つの目安として覚えておくようにしましょう。
原価率の高い食べ物と低い食べ物がある
提供するメニューを考える場合、原価率の高い食べ物と低い食べ物があることも把握しておくべきです。
「原価率が高い食べ物 = 材料費の高い食べ物」ということになりますが、代表的なものとしては肉や魚などがあげられます。
一方、たこ焼きやお好み焼きなどの粉ものや、芋が原料のフライドポテトなどは原価率が低く、飲食店が積極的に取り扱いたいメニューです。
また、ソフトドリンクやアルコールなどの飲料も原価率が低く、儲けがでやすいメニューの定番です。
ただ、最近は小麦粉の値段が高騰するなど、時代的な背景によって原価率が大きく変わることもあるので注意が必要です。
原価率とあわせてロス率も把握しておく
飲食店の経営者は原価率ばかり重視してしまいがちですが、ロス率にも目を向けなくてはいけません。
ロス率とは、売上高に対する食材を廃棄する割合を指す言葉です。
どれだけ多くの売上をあげることができたとしても、廃棄する食材が増えればその分仕入れにかかるお金が増え、原価率が上昇することになります。
つまり、原価率を抑えたいのであればロス率を下げる取り組みも必要になるのです。
ロス率は、「廃棄した食材の金額÷売上高×100」で求めることができます。
FLコストの把握も必要
儲けをなるべく増やしたいのであれば、FLコストの把握も必要不可欠です。
FLコストのFは材料費のことを指し、Lは人件費のことを指しています。
飲食店の経営にかかる経費は材料費だけではないので、材料費と人件費をあわせて把握しておくべきだと考えられています。
FLコストの比率は一般的に売上高に対して55~60%が理想とされているので、その範囲に収められる店舗経営を目指すようにしましょう。
各食材の歩留まりを把握しておく
食材には料理に使えるところと、調理に使えず廃棄するところがあります。
料理に使用できる部分の量や割合を歩留まりと言います。
歩留まりの量や割合が多い食材は無駄の少ない食材であるため、原価率も低くなりやすく優秀な食材です。
原価率を抑えるには、歩留まりが優秀な食材をどれだけ増やせるかも重要になってくるので、各食材の歩留まりについても把握しておく必要があります。
飲食店の原価率が高くなるのを抑える方法
原価率に関する基本的な考え方について把握できたら、原価率が高くなってしまうのを抑える方法についても学んでいきましょう。
飲食店の原価率が高くなるのを抑える主な方法としては、5点があげられます。
- 調理をおこなう際の食材の量を設定する
- 提供価格を見直す
- 食材のロスを減らす
- 仕入先と良好な関係を築く
- 仕入先を開拓する
それぞれ詳しく解説していきます。
調理をおこなう際の食材の量を設定する
調理する際に使用する食材や調味料の量は、それぞれのメニューごとにしっかりと設定しておくようにしましょう。
量を設定せず感覚に頼って調理してしまうと、使用する食材の量が多くなりすぎてしまいかねません。
そうなると、当然原価率も高くなります。
また、使用する食材や調味料の量を決めておかないと提供するたびに味が変わってしまい、安定した味を提供し続けることができません。
そうならないためにも、あらかじめ使用する食材の量を決めておくことが重要なのです。
提供価格を見直す
繁盛しているはずなのに儲けにつながらない飲食店は、提供価格を安く設定しすぎている可能性があります。
なるべく安い価格で提供するのは悪いことではありませんが、儲けを出せないと店舗の存続自体が難しくなってしまうので、儲けが出る価格帯で提供価格を設定するようにしなくてはいけません。
先ほど紹介したとおり原価率は30%前後が理想とされているので、極端に原価率が高くなってしまっている場合は提供価格を見直してみてください。
食材のロスを減らす
飲食店の原価率を考える場合、原価率だけでなく食材のロス率にも目を向ける必要があると紹介してきました。
そこでぜひおこないたいのが、食材ロスを減らすための取り組みです。
廃棄する食材の量が減れば、それだけ原価率も下がります。
まずは使いきれずに腐らせてしまうなど、無駄になっている食材の量や種類を把握し、なぜ食材のロスが発生してしまっているのかを考えるところから始めてみましょう。
また、使用しない部分を減らすことも大切です。
取り入れているメニューの関係上、本来であれば使える部分であるにも関わらず廃棄してしまっている部分がないか見直してみましょう。
そのようなもったいない部分があるのであれば、その部分を活かせるメニューを考案することで食材のロスを減らせるようになります。
仕入先と良好な関係を築く
すぐに実践できる方法ではないため即効性はありませんが、仕入先と良好な関係を築くことで原価率を抑える効果も期待できます。
仕入先との関係がスタートしたばかりの段階では、実績がないためなかなか信用してもらうことができません。
また、実績がないので価格交渉も難しいでしょう。
一方、飲食店を経営する中で安定して仕入れをおこない、付き合いが長くなれば、信頼してもらえるようになり良好な関係を築けるようになります。
その場合、仕入れ値の交渉もおこないやすくなるのはもちろん、あちらから仕入れ価格の引き下げを提案してくれるようになる可能性もあります。
店舗の経営を安定させるためにも仕入先との良好な関係の構築は必要になるので、ぜひ意識するようにしてください。
仕入先を開拓する
飲食店の開業当初はとにかく大変なので、売上の確保や安定に務めるべきです。
そのため、すぐに取り組むことはできませんが、飲食店の運営がある程度安定してきたら新しい仕入先の開拓にも取り組んでみましょう。
飲食店に対して食材を卸している会社は無数にあります。
その地域でのみ商売をおこなっている地域密着型の会社もあれば、全国で商売をおこなっている大手の会社もあり、特定の食材、またはさまざまな食材を複合的に取り扱っている会社など多岐にわたります。
いろいろな会社にアプローチしてみて、既存の仕入れ値より少しでも安く仕入れられないか相談してみましょう。
仕入れ値が下がれば、その分だけ原価率も下がります。
ただ、仕入先が変われば食材の質も変わるので、食材の質を低下させてしまわないよう注意しながら進めるようにしてください。
まとめ
飲食店を始める上で把握しておきたい原価率について紹介してきました。
飲食店は、原価率をどこまで抑えられるかによって得られる収益が大きく異なってきます。
飲食店ビジネスで成功したいのであれば、原価率の理解は必須ですし、原価率の考え方についてもしっかりと把握しておかなくてはいけません。
より原価率を抑えて儲けを出したいのであれば、原価率を抑える取り組みも必要になるでしょう。
仕入先との良好な関係の構築や新しい仕入先の開拓はすぐにおこなえるものではありませんが、その他の取り組みはすぐにでも始められるものばかりなので、ぜひ意識してみてください。