日本には約80万軒の飲食店が軒を連ねていますが、その廃業率は非常に高く、1年以内に30%、2年で50%が廃業するとされています。
廃業率は飲食業界全体における数字であるため、店舗を構える場所やジャンルによってはこの限りではありません。
しかし、大きく稼げる可能性が高い業界である反面、廃業率が高い業界であるということも認識しておかなくてはいけません。
せっかく開店させた飲食店を廃業させてしまわないために把握しておきたいのが、飲食店を成功させるためのポイントです。
この記事では、飲食店を成功させる上で知っておきたい経営のポイントについて解説していきます。
飲食店を経営する上での注意点についてもあわせて解説していくので、これから飲食店の経営をスタートさせたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
飲食店の経営を成功させるために知っておきたい9つのポイント
飲食店の経営に取り組む方が知っておきたい経営を成功させるための主なポイントとしては、次の9つがあげられます。
- しっかりと準備した上で店舗を立ち上げる
- マーケティングに力を入れる
- 従業員の教育を怠らない
- 経費の削減に取り組む
- 競合店舗の分析を欠かさない
- 改善に取り組む
- 時代のニーズを把握して応える
- お金に関する知識を身につけて流れを把握する
- フランチャイズに加盟する
それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
1. しっかりと準備した上で店舗を立ち上げる
飲食店が成功するかどうかは、店舗を開店するまでの準備の段階で8割決まるとされています。
需要の少ないジャンルや、住人の少ない地域で店舗を出店しても客足は伸びません。
また、ターゲット選びも重要です。
例えば、ファミリー層が多く住む住宅街に飲食店を出店するのであれば、バーや居酒屋よりもファミリーレストランの方が向いていると考えられます。
店舗の経営に失敗する飲食店は、企画や構想の段階で準備が甘い傾向にあります。
センスのある経営者であれば勢いで出店して成功することも可能性もありますが、そういったケースは非常に稀です。
店舗経営を成功させたいのであれば、
- ジャンル選び
- 出店場所の選定
- ターゲットの設定
- 強みとして打ち出す部分
など、成功するための計画を立てた上で店舗の経営をスタートさせるようにしましょう。
2. マーケティングに力を入れる
飲食店を成功させるには他の店舗よりもお客さんに選んでもらえる店舗にしなくてはいけませんが、そこで重要になるのはマーケティングです。
マーケティングは、店舗の認知度を向上させ、より多くのお客さんに店舗を利用してもらうための試みです。
ひと昔前までは飲食店の情報を集めるには、近場の店を利用したり、知り合いに紹介してもらった店を利用するのが一般的でした。
しかし、スマートフォンが広く普及した今では、お客さんが簡単に飲食店の情報をリサーチすることができるようになりました。
つまり、こちらから積極的に情報を発信するマーケティングに力を入れれば入れるほど、お客さんに選んでもらいやすい時代に変化したのです。
逆に言えば、マーケティングに力を入れていない飲食店はアプローチすることができないため、お客さんに見つけてもらうことができず、他の飲食店の陰に埋もれてしまいかねません。
そうならないためにも、広告やSNSを駆使し、積極的にマーケティングに取り組まなくてはいけないのです。
3. 従業員の教育を怠らない
従業員を雇う予定があるのであれば、従業員の育成にも力を入れなくてはいけません。
従業員教育に力を入れていない店舗は、接客態度が悪くなっていたり、サービス・対応が遅いなど、客足が遠のいてしまうようなことが多い傾向があります。
また、教育が行き届いていないと業務の効率化を図ることもできないため、経費ばかりがかさんでしまいます。
実際に従業員を雇い始める前に、マニュアルを作成するなどしてスタッフ育成の体制を整えるなど、従業員教育にも積極的に取り組むようにしましょう。
4. 経費削減に取り組む
飲食店を成功させたいと考えた場合、多くの経営者が売上を伸ばすことだけを考えてしまいがちですが、同じくらい経費削減の取り組みも重要になるということを忘れてはいけません。
もちろん、飲食店の成功には売上の向上が欠かせませんし、売上が伸びれば伸びるほど店舗の経営状態は上向きます。
ただ、いくら売上が上がっても、それを同じくらい経費で出ていってしまうようでは、いつまで経っても経営状態は上向きません。
毎月の経費の内容を把握して、削減できるものがあればどんどん削減していくようにしましょう。
5. 競合店舗の分析を欠かさない
他者から学んで積極的に取り入れる企業や店舗は成功しやすいと言われますが、それは飲食店も例外ではありません。
店舗経営を成功させたいのであれば、成功している飲食店の良いところを研究して、自分の店舗にもどんどん取り入れていきましょう。
- 店舗の外観や内観
- 従業員の接客
- 提供されているメニュー
- メニューの価格
など、分析するべきところはたくさんあります。
実際に人気店やライバル店に足を運んで、徹底的に分析してみましょう。
従業員の接客・サービスや人気メニューなど、自分の店舗より優れている・足りないと感じるものがあれば、お店に取り入れるのもいいでしょう。
ライバル店から学べるところはたくさんあるので、定期的に足を運んで分析するようにしてください。
6. 改善に取り組む
飲食店を経営していると改善点が見えてくることが多々あります。
お客さんや従業員から改善点についての意見をもらうこともあるでしょう。
また、先ほど紹介した他店を分析する中で改善点が見えてくることもあります。
改善に取り組んだからといって必ずしも成果があらわれるわけではありませんし、逆にマイナスに働いてしまうこともあります。
しかし、改善に取り組まない限り前進することはできません。
ビジネスにおいて現状維持はリスクでしかありませんので、店舗がより良くなるように何事も改善に取り組むようにしましょう。
7. 時代のニーズを把握して応える
繁盛する飲食店は、時代のニーズを常にリサーチし、応える努力をしています。
最近は現金をまったく持ち歩かずにキャッシュレス決済のみを利用しているという人が増えてきていますが、繁盛している店はそのニーズに応え、キャッシュレス決済を導入しています。
また、新型コロナウイルスが未だに猛威を奮っていることもあって新型コロナウイルスへの対策がとられている店舗を選ぶ人が多くなっていますが、繁盛店はコロナ対策もバッチリです。
キャッシュレス決済の導入や新型コロナウイルス対策など、時代のニーズに応えるにはコストもかかりますが、それ以上の効果をもたらしてくれます。
何より、時代のニーズについていけない・応えられない店は廃れていくだけなので、なるべく応えられるようにしなくてはいけません。
8. お金に関する知識を身につけて流れを把握する
飲食店の経営にはお金に関する知識が欠かせません。
お金のことを曖昧にしたまま商売をおこなっていると、いつか必ず資金繰りなどお金の部分で困ることになります。
何より自身の店舗のキャッシュフローを把握していないと、「店舗は繁盛しているのにキャッシュが足りなくて店舗の経営を続けることができない…」という状態になってしまいかねません。
もし、お金の流れを把握するのが苦手なのであれば、経理を雇うなど専門家に任せるという方法もあります。
9. フランチャイズに加盟する
「飲食店でのビジネスに挑戦したいけど、経験がなく成功させられる自信がない…」という方におすすめなのがフランチャイズへの加盟です。
飲食店としてすでに成功しているフランチャイズに加盟すれば、飲食店の経営に関する経験や知識、ノウハウのない方でも成功しやすくなります。
フランチャイズに加盟する場合、初期費用として加盟金や保証金が必要になったり、毎月ロイヤリティを支払わなくてはいけないなどデメリットもあります。
しかし、そのデメリット以上に、フランチャイズ加盟店としての恩恵を受けながら飲食店を経営できるので、フランチャイズへの加盟もぜひ検討してみてください。
飲食店を経営する上での3つの注意点
飲食店の経営を成功させたいと考えているのであれば、飲食店を経営する上での注意点も把握しておかなくてはいけません。
飲食店を経営する上での主な注意点としては、次の3点があげられます。
- 労働時間に関する基礎知識を学んでおく
- 従業員との関係構築を疎かにしない
- 衛生管理を徹底する
それぞれの注意点について解説していきます。
1. 労働時間に関する基礎知識を学んでおく
飲食店の規模によって従業員を雇う必要がありますが、人を雇う上で把握しておかなくてはならないのが労働時間についてです。
従業員を雇用する際、1日の労働時間を8時間以内、一週間あたりの労働時間を40時間(または44時間)以内に収めなくてはならないというルールに従わなくてはいけません。
これは、労働基準法という法律によって定められているもので、違反してしまうと罰せられる可能性があります。
個人が経営している飲食店は労働時間の管理が曖昧になってしまいやすいため、特に注意しなくてはいけません。
労働基準法では、労働時間以外にも残業代の支払い義務や休憩時間に関するルール、休日に関するルールなどが定められています。
すべてを完璧に把握する必要はありませんが、
- 労働時間
- 残業代の支払いについて
- 休憩のルール
- 休日のルール
など、トラブルに発展しやすい基本的な部分についてはしっかりと把握しておくようにしましょう。
2. 従業員との関係構築を疎かにしない
飲食店を経営している経営者の中には、従業員のことをないがしろにしてしまう経営者が多く、そのことが度々問題になります。
資金力のある大企業が運営する飲食店ならまだしも、個人が経営する飲食店でそういった問題が発生してしまった場合、廃業に追いやられてしまいかねません。
そのため、従業員を雇う予定なのであれば、どのようにして従業員と良好な関係を構築していくのかについても考えておく必要があります。
個人で経営する飲食店と言えど、従業員との関係構築を疎かにするべきではありません。
何より、従業員の存在が店舗の運営を支えているということを理解しておかなくてはいけません。
- 従業員が意見を言いやすい環境を整える
- 従業員の意見に耳をかたむける
- 定期的に面談を設ける
など、良好な関係を構築するための取り組みを積極的に導入するようにしましょう。
3. 衛生管理を徹底する
飲食店を経営する上で注意しなくてはいけないのが、「食中毒」についてです。
国内の飲食店では、毎年600件近くの食中毒が発生しています。
食中毒が発生すると保健所による立ち入りでの検査がおこなわれ、衛生管理を怠っていたなど食中毒の原因が店舗側にあると認定されると、3日間ほど営業を停止しなくてはいけなくなります。
その場合、被害を受けたお客さんから訴えられて損害賠償を請求される可能性もあるため、衛生管理は徹底しなくてはいけません。
何より、「食中毒を起こした飲食店」という評判が立つと、お客さんが入らなくなって店舗経営が立ち行かなくなる可能性もあります。
また、食中毒が発生しなかったとしても、客席やトイレなどの店内や店の外が汚い飲食店は「衛生観念に問題のある店舗」といったイメージがつき、客足が遠のいてしまうので、衛生管理は徹底するようにしてください。
まとめ
「飲食店を成功させるには」というテーマを深堀りして解説してきました。
飲食は、成功すれば大きく稼ぐことができる業界であるものの、2年以内に約半数が廃業に追い込まれる厳しい業界です。
そのため、思いつきや勢いだけで経営をスタートさせるべきではありません。
今回紹介した9つのポイントと3つの注意点は、いずれも飲食店の経営を成功させる上で欠かせないものになるので、しっかりと把握した上でビジネスをスタートさせるようにしてください。