人手不足が叫ばれる昨今。
求人募集をかけてもなかなか人が集まらず、うんざりしている飲食店のオーナーも多いのではないでしょうか?
そんな人手不足問題を解決する糸口になるのではと期待されているのが、外国人の雇用です。
しかし、外国人の雇用は日本人の雇用とはシステムや必要な手続きが異なるため、違いや雇用の方法をきちんと把握しておかなくてはいけません。
そこでこの記事では、飲食店における外国人の雇用について紹介していきます。
- 外国人を雇用するメリット
- 外国人を雇用するデメリット
- 外国人を雇用する際の注意点
- 外国人を雇用する上で把握しておかなくてはいけない在留資格
などについて紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
飲食店が外国人を雇用するメリット
飲食店が外国人を雇用することで期待できるようになる主なメリットとして、3点があげられます。
- 労働力を確保できる
- 外国人のお客さんに対応できる
- 日本人スタッフへの刺激になる
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
労働力を確保できる
高齢化の影響もあって日本人の労働人口は減少し続けており、どの業界も労働力を確保できずにいますが、飲食業界はその傾向が特に顕著です。
外国人労働者は、その日本の労働力に関する問題を解決する存在として期待されています。
外国人労働者の数は2013年から増え続けており、200万人に迫る勢いです。
国の方針もあって外国人労働者の数は今後も増えていくことが予想されるので、外国人労働者を積極的に受け入れるようにすることで労働力をしっかりと確保できるようになります。
外国人のお客さんに対応できる
日本人スタッフだけの店舗だと外国人のお客さんが来店したときの対応に手間どってしまいがちです。
英語などの外国語が話せるスタッフが在籍していないことでちょっとしたトラブルに発展してしまうこともあります。
外国語の喋れる外国人スタッフがいれば外国人のお客さんが来客したとしても冷静に対応できるので、お客さんの満足度が高くなるだけでなくトラブルを未然に防ぐこともできます。
日本人スタッフへの刺激になる
外国人スタッフは、日本人スタッフに刺激をあたえてくれる貴重な存在です。
海外から来て日本で頑張っているという姿だけで刺激になりますし、日本人のスタッフに外国語を教えるなどいい影響をあたえてくれたりもします。
また、常日頃外国人のスタッフと接することで、外国人のお客さんが来店した場合でも臆することなく接客できるようにもなります。
飲食店が外国人を雇用するデメリットや注意点
人手不足の解消などのメリットをもたらしてくれる外国人の雇用ですが、デメリットがないわけではありません。
飲食店が外国人を雇用する上で気をつけなくてはいけないデメリットや注意点として2点があげられます。
- 日本のマナーやルールを覚えてもらう必要がある
- 日本人のスタッフよりも教育に時間と手間がかかる
それぞれ詳しく解説していきます。
日本のマナーやルールを覚えてもらう必要がある
日本には海外の国にはない独特のマナーがあります。
外国人と言えども店舗でスタッフとして働くのであれば、日本のマナーを覚えてもらわなくてはいけません。
例えば、日本ではお客さんを呼ぶときに「〇〇様」と「様」をつけて呼ぶのが当たり前となっていますが、海外の国にはそういった文化や考え方のない国もたくさんあります。
また、日本ではゴミを分別して捨てるのが当たり前のルールですが、海外の国にはそういったルールのない国もあります。
不要なトラブルを避けるためにも、外国人を雇用する場合はまずはそういった日本独特のマナーやルールを覚えてもらわなくてはいけません。
日本人のスタッフよりも教育に時間と手間がかかる
先ほど紹介した日本ならではのマナーを覚えてもらう必要がある点にしてもそうですが、外国人は日本人スタッフよりも教育に時間と手間がかかります。
しっかりと日本語で対応できるように見える外国人でも、少し難しい日本語や日本語特有のちょっとしたニュアンスが通じなかったりすることは少なくありません。
お客さんと接する場合はもちろん他のスタッフとのやりとりでもそういった部分への理解が必要になるため、どうしても教育に時間と手間がかかってしまう傾向にあります。
外国人を雇用する上で知っておきたい「在留資格」
外国人をスタッフとして雇用する場合、「在留資格」が必要になります。
この在留資格が日本人の雇用と外国人の雇用における大きな違いです。
在留資格の種類は、外国人をアルバイトとして雇う場合と正社員として雇う場合で異なります。
それぞれ詳しく解説していきます。
アルバイトとして雇う場合に必要な在留資格
外国人をアルバイトとして雇う場合に必要な在留資格としては、以下の4つがあげられます。
- 定住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等
- 留学生
- 家族滞在
- 特定活動
定住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等といった在留資格を取得している場合、労働時間などの制限なく働くことが可能です。
留学生と家族滞在の在留資格を保有している外国人をアルバイトとして雇用する場合は「資格外活動許可」が必要になり、週28時間以内という労働時間の制限が生じます。
特定活動については人によって要件が異なるので、パスポートに記載されている内容で就労可能かどうかを確認する必要があります。
正社員として雇う場合に必要な在留資格
外国人を正社員として雇う場合に必要な在留資格としては、次の4つがあげられます。
- 定住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等
- 特定活動
- 技能
- 特定技能1号
定住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等については、アルバイトとして雇用する場合と同様に労働時間などに制限なく働いてもらうことが可能です。
特定活動の在留資格の場合、通訳を兼ねた接客要員としてであれば採用することはできますが、調理や雑用などとして採用することはできません。
技能は経験とスキルを日本で活かして働く目的で来日した外国人にあたえられる在留資格で、調理担当者として採用できますが、接客担当者としては採用できませんので注意しましょう。
特定技能1号は、減少し続ける日本の労働力を補うために新しく設けられた在留資格で、この在留資格を保有している外国人は最長5年間、飲食店を含む日本の店舗・企業で働けるようになっています。
ただ、住居の提供と生活の支援を店舗側が行うことが雇用の条件になるので注意してください。
飲食店が外国人を採用するならアルバイトからの採用がおすすめ
飲食店が外国人を採用する場合、いきなり正社員として採用するのではなく、アルバイトとして採用して、必要であれば後々正社員採用に切り替えるという方法がおすすめです。
なぜなら、外国人を正社員として採用するには手間やコストがかかるため、アルバイトとして採用するよりもハードルが高くなってしまうからです。
正社員として働いてもらう場合、以下のような採用可能という制約があります
- 特定活動の在留資格であれば接客要員としてのみ
- 技能の在留資格であれば調理担当者としてのみ
特定技能1号という新しい在留資格もできましたが、特定技能1号として採用するには住居の提供や生活の支援をおこなわなければなりません。
一方、アルバイトとして採用する場合であれば、働ける時間の制限はあるものの留学生や家族滞在者を採用することもできます。
採用のハードルが低くて手続きが簡単なだけでなく、採用できる人材もアルバイトとして採用する場合の方が対象者が多くなるので、まずはアルバイトとして採用してみることを検討しましょう。
在留カードのチェックポイント
飲食店のオーナーが外国人をスタッフとして採用する場合、在日外国人の身分証明書である在留カードで在留資格や個人情報をチェックします。
在留カードをチェックする際、以下の3点をチェックしなくてはいけません。
- 偽造されたものでないか
- 期限を過ぎていないか
- 就職可能かどうか
それぞれのチェックポイントについて詳しく解説していきます。
偽造された在留カードじゃないかチェックする
在留カードをチェックする上で特に注意したいのが、偽造された在留カードについてです。
実は近年偽造した在留カードが数多く出回っており、その偽造された在留カードを使って仕事に就こうとする外国人も増えている傾向にあります。
偽造された在留カードを所有している外国人を雇用してしまった場合、仮に偽造されていたことを把握していなかったとしても罰せられてしまう可能性があるので注意しなくてはいけません。
偽造された在留カードを見分けるポイントとしては、3点があげられます。
- 在留期間や有効期限の数字
- 在留カードの右下にある角印
- 裏面の枠線内の文字の間隔
偽造されている在留カードは、在留期間や有効期限の数字に半角が使用されていたり、全角と半角の両方が使用されていたりします。
本物の在留カードでは全角の数字しか用いられていません。
また、在留カードの右下には交付者の角印が押されていますが、偽造されたものは濃淡やかすれがなく、異常なまでにくっきりと捺印されています。
在留カードの裏面には資格外活動許可欄と在留資格更新等許可申請欄があり、これらは太い枠線で覆われています。
この枠線には小さな文字で「MINISTRY OF JUSTICE」と表記されているのですが、偽造されたカードはこの文字の間隔が均等ではありません。
在留カードを確認する際は、必ずこれらのポイントをチェックするようにしましょう。
在留カードの期限をチェックする
在留カードには期限が設けられており、期限が切れて失効しているカードの所有者を雇用することはできません。
期限が切れてしまった在留カードは身分証としての効力を発揮できませんので注意してください。
この場合、在留カードを更新してもらえば問題なく雇用できるようになるので、期限が切れてしまっていることを説明して在留カードを更新してもらうようにしましょう。
また、在留カードの裏面に「在留資格変更許可申請中」という記載があれば期限が切れてしまっていても身分証としての効力を発揮できるようになっているため、問題なく雇用できます。
就労可能かどうかをチェックする
在留カードを所有しており、なおかつ在留カードの期限が切れていなかったとしても、在留カードの裏面に「就労不可」と表記されている場合は雇用することができません。
観光や留学、研修などで来日している外国人の在留カードには就労不可と記載されていて、就労できないようになっています。
一方、「就労制限なし」と記載されている場合は問題なく働いてもらうことができます。
留学生の場合であっても「資格外活動許可」と記載されている場合、アルバイトとしてであれば採用可能です。
「指定書により指定された就労活動のみ可」と記載されている場合はパスポートに記載されている本文の内容によって雇用できるかどうかの判断が異なってくるので、必ず確認するようにしてください。
飲食店で外国人を雇用するときの流れ
外国人の雇用を検討しているのであれば、雇用の流れについても把握しておくべきです。
飲食店における外国人の雇用の大まかな流れは以下のとおりです。
- 募集
- 面接
- 在留資格の確認などの手続き
- 就労ビザの申請
- 雇用開始
外国人の雇用と言っても、募集から面接までの流れについては日本人を採用する場合と変わりません。
ハローワークや人材募集のサイト、SNSなどを使って募集をかけ、応募があれば日程を調整して面接をおこないます。
面接では日本語力や人間性などはもちろん、在留資格の有無もチェックしなくてはいけません。
面接の結果、採用することが決まった場合、雇用契約書を作成して雇用契約を締結します。
相手が学生で資格外活動の許可を得ている場合であれば、就労ビザの申請や切り替えは必要ありませんが、週に28時間以上働かせてはいけない決まりになっているので注意してください。
留学生ではない外国人を雇用する場合や正社員として働いてもらう場合は、就労ビザの申請が必要になるので、必ず申請をおこなうようにしましょう。
手続きが完了すれば、はれて雇用開始となります。
まとめ
飲食店における外国人の雇用について紹介してきました。
外国人は飲食店の深刻な人材不足を解消してくれる貴重な人材です。
スムーズに接客してもらえるようになるには日本のマナーを覚えてもらうなどの教育が必要ですが、外国人のお客さんにも対応できる点や店舗の活性化を考えると前向きに雇用を検討するべきでしょう。
外国人雇用は日本人雇用とは異なる点も多く、在留資格の確認等も必要になるので、今回の内容を参考にしながら採用に取り組んでみてください。