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この記事は、ビジネスチャンス 2020年10月号の記事になります。
【File1】フォルクスウェア(熊本県熊本市):みせプリ
店舗のリピーター獲得ツールとして注目されている店舗アプリの開発だが、初期投資で数百万円以上の費用がかかるものがほとんどである。
そのため個店や小規模店舗では、アプリ導入は無理と諦めているところも多いだろう。
だがフォルクスウェア(熊本県熊本市)の「みせプリ」は、格安で店舗アプリの作成が可能。契約者の8割が利用するスタンダードプランは、初期費用が3万円。
また月々発生する1万4800円の利用料は、業界内でもかなり低額のものとなっている。
料金を抑えられる理由は、アプリの形態がフォーマット化されている点にある。
オーダーメイドで一から制作する「スクラッチ」とは異なり、制作もエンジニアではなく、非エンジニアが担当するため、人件費コストを圧縮できるのだ。
またテンプレートの形式とはいえ、デザインは種類以上を取り揃えている。
ナチュラル・クール・ポップといったイメージで選択でき、アイコンや背景のデザインを選び、入れる機能を選択することで、見た目の印象も大きく変えることができる。
「アイコンのボタンやフォントも微妙に変え、店舗ごとに違うアプリができるようこだわっています」
初期費用3万円で始められる店舗アプリ作成、テイクアウトやデリバリーにも対応
店舗アプリとしての機能は、スタンプ、クーポン、プッシュ通知などのほか、珍しい機能もある。
「マイヒストリー」と呼ばれる機能は、体験した店舗についての感想や星でのランク付けを記録できるもの。一般には公開しない自分のメモのような扱いだが、店舗側では星を見ることができる。
また「スタッフ紹介」機能は、店舗のスタッフが顔写真付きで見られるもので、サロン系の店舗では指名予約に役立てられる。
LINEチャットのような「トーク」機能で、スタッフとユーザーが質問等のコミュニケーションをとることも可能だ。
ほかにも新しく追加された「テイクアウト」と「デリバリー」は、決済手数料が6.6%と、デリバリー業務を行わないパターンの出前館の手数料より割安に設定されている。
みせプリには初期費用3万円で月額4980円のエントリープラン、同9800円のエコノミープランもあり、プランによってダウンロード上限数や追加店舗数が異なる。
最初はエントリープランから始めて上位プランへの変更も可能だ。こだわりたい場合は初期費用20万円、月額5万円のカスタムプランも用意されている。
現在のみせプリの契約数は450を超え、導入店舗数でいうとその倍以上に上る。
導入や利用料が低額ということもあり、個人事業主が手掛ける小規模の個店などで普及が進んでいるという。
「必要な情報を入力するだけで自動的にアプリが生成され、申し込みからアプリのストア申請まですべてインターネット上で完結できるため、制作の手間はほとんどかかりません。
また運用後は管理画面で顧客台帳も生成できるので、顧客属性を踏まえた上でのプロモーションも可能となります」
【File2】フードトラックカンパニー(東京都目黒区)
2017年月の会社設立から2年半で、累計300台を超えるキッチンカーを販売してきたフードトラックカンパニー(東京都目黒区)。
わずかな期間でこれだけの実績を積み上げることができたのには、いくつかの理由がある。
設立から2年半で累計300台のキッチンカーを販売
浅葉郁男社長は同社を設立する前、自らキッチンカーを運転して移動販売を行っていた。キッチンカーの製造には、実はこのときの経験が十二分に生かされているという。
その一つが、保健所の定める要件に対応した仕様でキッチンカーを製造していることだ。
保健所から営業許可を受けるためには、きちんと安全管理や衛生管理ができるように車内の環境を整備しておかなければならない。
知識や経験のないままキッチンカーを製造すると、このもっとも重要な点を見落としてしまい、結果的に移動販売車として使えない車になってしまうことがあるそうだ。
浅葉郁男社長によれば「大切なのは見た目よりも中身。まずは移動販売車としてしっかり役目を果たせるようにすることが重要です」と話す。
また、保健所対応の仕様も含め、ベースの部分を量産化することで製造コストを削減している点も、同社が実績を伸ばしている理由の一つだ。
1台1台、オーナーから要望を受けて車両をカスタマイズしていたのでは、どうしても費用はかさんでしまう。
これでは「実店舗を持つよりも少ない投資で飲食ビジネスを始められる」という、移動販売の良さがなくなってしまう。
浅葉社長はこの点についても、「見た目を格好良くしたいのなら、儲かってからすれば良い」と、強いこだわりを持っている。
コロナ禍を機に飲食店からの問い合わせが急増
同社で車両を購入するのはどんな層なのか。実はコロナ禍を境に、属性が大きく変わりつつあるようだ。
騒動前は、問い合わせのほとんどは飲食の経験・未経験に関係なく、独立開業を目的とした問い合わせだった。
ところが騒動後は現役の飲食店オーナーや飲食店を経営する法人からの問い合わせが急増。今では独立開業関係の問い合わせはほとんどない状態だという。
これは起業意欲が低下する一方、店舗だけに依存したビジネスモデルから脱却しようという飲食店が増えているからだろうと、浅葉社長は推測する。
販売するキッチンカーは、サイズ別の3タイプ。
軽トラックをベースにした最もコンパクトな「350」は、主に都内でのランチや総菜の販売、クレープ屋に向いている。小回りが利いて扱いやすいので、女性オーナーにもおススメだ。価格は232万円〜。
大型イベントへの出店を考える場合は、大容量に対応できる「1500」がいいだろう。価格は310万円〜。
「どこのエリアでやるのかによっても、車の向き不向きがあります。都内は大型の車両を置けるような場所が限られているので、小型の車でないとビジネスとして成り立ちにくい。
一方、地方のフェスなどを中心に出店するというのであれば、土地の広さはあまり気にしなくて良いので、大型車両でも十分やっていけるでしょう」
この記事は、ビジネスチャンス 2020年10月号の記事になります。