ビジネスチャンスは、1994年に創刊された起業家や経営者などのビジネスパーソン向け企業・新規事業の専門情報誌です。主にフランチャイズや代理店ビジネス、ECに関する取材を行い、新たなビジネス情報を掲載しています。
この記事は、ビジネスチャンス 2020年08月号の記事になります。
軽減税率導入と新型コロナの流行でテイクアウト・デリバリーが飲食店の新トレンドに
新型コロナウイルス感染拡大に伴う消費者の外出自粛で、飲食業界は過去に類を見ない大きな危機に直面している。
そんな中、減少した売上を補おうと、多くの飲食店が取り組んでいるのが、テイクアウトやデリバリーといった中食事業だ。
2019年10月に、消費税増税に合わせて軽減税率が導入された際にも、大手チェーンが次々とサービスを始めて話題となったが、今回は個人経営の飲食店まで巻き込むほどの大きな広がりを見せている。
飲食店を救う切り札として期待されるテイクアウト・デリバリービジネスを取材した。
市場規模は一気に拡大へ
富士総研のまとめたデータによると、テイクアウト・デリバリーの市場規模は2013年以降、ずっと横ばい状態が続いていた。
それが2019年10月に軽減税率が導入されたのをきっかけに拡大へと転じ、2019年度はテイクアウトが約6000億円、デリバリーが約2900億円を突破 する見込みとなった。
2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、市場規模はさらに大きくなりそうな気配だ。
それでは、中小飲食店がこれからテイクアウトやデリバリーサービスを始めるために、どんな準備が必要なのか。それぞれについて見ていく。
テイクアウト編
【STEP1:許可】飲食店営業許可で弁当を売るのはNG
昼時の繁華街やオフィス街では、飲食店が店先で持ち帰り弁当を販売している光景をしばしば目にする。
飲食店の営業に必要な「飲食店営業許可」さえとっていれば、どこでも弁当の販売ができるのだと思われがちだが、実際は違う。
実は「飲食店営業許可」でテイクアウトとして販売できるのは惣菜(おかず)に限定されていて、「ご飯」を付けたり、作り置きの弁当を売ることは基本的に認められていない。
したがって、テイクアウトを始めるのであれば、まず今の店舗が何の許可を受けて営業しているのかを確認しておく必要がある。
弁当類を販売するのであれば、別途「仕出し営業の許可」を取らなければならない。
ただし保健所によっては手続きは不要と判断することもある。手続き自体は、変更届を出すだけなので非常に簡単だ。手数料等もかからない。
ただし、許可を得るためには「厨房とイートインスペースが壁で仕切られていること」や「ドアがあること」など、店舗が一定の要件を満たしていなければならない。
要件を満たしていないのであれば、販売する商品を「惣菜」に限定するなど、やり方を工夫する必要がある。
■地域によってはご飯類を売るのに保健所の許可が必要
【STEP2:商品】コンビニを意識した価格設定がポイント
営業の準備が整ったら、次は実際にどんな商品をテイクアウトで販売するかを検討する段階だ。
すでに店舗で提供しているメニューをそのまま売るのであれば、容器さえ揃えればすぐできるのでそれほど難しいことではない。
容器は「ASKUL(アスクル)」や業務用資材・食材の専門サイト「カイコム」などで購入することができる。購入した資材は最短で翌日に手元に届く。
どんな容器を使うかで費用は変わるが、安いものなら1万円以下で1000食分揃えることも可能だ。「仕出し営業の許可」を取得する時間を含めても、2、3日あれば事業は立ち上がるだろう。
ただし、テイクアウトを収益源の一つとして考えるのであれば、さらに綿密な戦略を立てる必要がある。
商品を決める上で重要になるのが店舗の立地だ。
どんなエリアにあるのかによって、売るべき商品や価格設定、ターゲットなどは変わる。
立地は大きく、繁華街とオフィス街、郊外の3つに分けられる。
まずは繁華街だが、例えば居酒屋の場合、平時は周辺で働くオフィスワーカーなどをターゲットに、17〜24時の営業でアルコール類とそれに合わせたつまみ類を提供するというのが基本的なスタイルだ。
中には、昼の時間帯でランチを提供する店舗もある。この場合、平均客単価は夜で4000円前後、ランチタイムで800~900円といったところだろう。
これを、テイクアウト中心の店舗に切り替えるとどうなるか。
客層はほぼ変わらないが、営業時間は~時が中心となり、販売する商品は弁当類に変わる。一番の問題は販売価格をいくらに設定するかだ。
なぜかと言うと、イートインスタイルでランチを提供していたときとは競合が異なるためだ。
゙店舗で食事を出す場合の競合は、周囲の飲食店だ。だが、ランチ弁当の競合はコンビニだ。
コンビニの弁当類は平均価格が500〜600円と、飲食店で提供するランチよりも100~200円程度安いため、そのままでは高いという印象を与えかねない。
逆に、コンビニと同価格帯であれば、味や材料にこだわったり、作り立てで提供できる分だけ有利だ。
17〜20時の時間帯は、近隣に住む単身者や夜間も働く人々などがターゲットとなる。販売する商品は、酒の当てを意識した総菜やディナー弁当が中心で、価格についてはランチ弁当同様、ある程度コンビニを意識して値付けする必要がある。
■価格設定はある程度コンビニを意識する必要がある
次にオフィス街だが、ランチタイムについては、基本的には繁華街と同じ考え方だ。
ただ夜に関しては場所柄、繁華街ほどの需要は見込めない。営業は昼の時間帯が中心となると考えた方が良さそうだ。
郊外は、ランチタイムとディナータイムで客層が変わる点に配慮する必要がある。
まずランチタイムだが、メーンターゲットは近隣の事業所などで働く人々や、自宅で巣ごもりする主婦、テレワーカーなどだ。
販売する弁当の価格帯は、繁華街やオフィス街と同様、コンビニに寄せた価格帯にするのが良いだろう。
一方で方以降の時間帯には、ファミリーを意識した商品展開が求められる。栄養バランスを考えた盛り合わせの商品や、家族で一緒に食べられるボリュームのある惣菜が好まれる傾向にある。
■立地により客層は変わる
レシピを買うのも有効な手段の一つ
店舗で提供しているメニューにテイクアウトに適したものがない場合、あるいは商品開発にあまり手間暇をかけたくない場合は、レシピや販促ツールなどがひとまとまりになったパッケージを買ってしまう方法もある。
これであれば食材の仕入れ先を新たに開発したり、テイクアウト用のオペレーションを一から作る必要がないので便利だ。
最近は韓国風の唐揚げ「CRISPYCHIKENTOMATO(クリスピーチキンアンドトマト)」や「やどかり弁当」などを導入する店舗が増えている。
例えば、串揚げ店が前者を導入すれば、今ある調理器具を活かして、普段とは違ったメニューを販売できるようになるというわけだ。
【STEP3:集客】SNSはハッシュタグの使い方がカギ
商品が決まったら、次はいよいよ集客だ。簡単なのは、手作りのPOPや幟(のぼり)を立てて告知する方法だが、それだけでできる集客にはどうしても限界がある。
店の前を通る人にしかPRできないため、広く周知することもできない。素早く、着実に成果を挙げたいと考えるのであれば、Webや有料アプリなどを使うのが良いだろう。
だが、新型コロナウイルスの影響でただでさえ売り上げが減っているのに、新たに立ち上げたテイクアウト事業に投資できるだけの余裕がないことも考えられる。
そこでまず、極力コストをかけずできる方法から見ていく。
もっとも手軽なのは、リアルタイムで情報を発信することができるFACEBOOKやtwitter、InstagramなどのSNSを使った集客だ。
無料で使えるうえ、常連客などに協力してもらって容易に情報を拡散することもできるので非常に便利だ。
ただし、宣伝として活用するためには、いくつか押さえておかなければならないポイントがある。
必ず押さえておきたいのが「#(ハッシュタグ)」だ。
■広く周知するのに今やSNSは必要不可欠
これは投稿内で使うタグで、同じハッシュタグを登録した投稿を一覧で表示させるためのものだ。
今は、SNSユーザーの多くがハッシュタグを使って検索を行っているため、是非ともフル活用したいところだ。
1回の投稿で付けられるハッシュタグの数はサービスごとに異なるが、いずれを使う場合も、多くのユーザーにリーチするためにハッシュタグはできるだけ多く付けた方が良いとされる。最低でも10個以上は必要だろう。
ただし、ただ闇雲に無関係なワードを並べても意味はない。店舗のある場所や提供している料理などをうまく組み合わせなければ大した効果は出ないだろう。
また、ビッグワード、ミドルワード、スモールワードについてもきちんと把握しておく必要がある。
ビッグワードとは極めて多く検索され、大きな括りや業界全体を表したり、消費者によく知られているキーワードのことだ。
逆に具体的で検索される回数が少ないものをスモールワードと呼ぶ。
例えば、新宿の居酒屋に関するハッシュタグを考えた場合、ビッグワードは「居酒屋」、ミドルワードは「新宿居酒屋」、スモールワードは「新宿○○酒場(具体的な店舗名)」となる。
仮にビッグワードしかなかったらどうなるかと言うと、「居酒屋を探している人」にリーチすることはできても、「新宿で居酒屋を探している人」にリーチすることはできない。
また検索回数は多いものの、ハッシュタグとして使う店舗も増えるため上位表示される可能性は低くなる。
逆にスモールワードだけだと、情報がピンポイントになってしまうため、検索される確率は低くなる。
つまり、多くの人に周知しつつ、自店に対する関心の高い消費者にリーチするためには、ビッグワード、ミドルワード、スモールワードをうまく組み合わせたハッシュタグを付ける必要があるというわけだ。
飲食店の場合は、大まかなジャンルにメニューや地域名を付け足していくのが良いだろう。
また、あえて言うまでもないが、情報はできるだけ多く更新する方が良いとされる。一度発信したキリでは、すぐに情報の鮮度は失われ、ユーザーは飽きてしまう。
「今日の一押し」や「日替わり」など、意識的に新しい情報を発信していくことで期待感を煽ることも、集客を増やすコツの一つだ。
Googleマップで視覚的にアプローチ
最近は、Googleを集客に活用する店舗も増えている。
マイビジネスに登録しておけば、「テイクアウト」で検索されたときに表示されやすくなるだけでなく、Googleマップ上でもテイクアウト実施店であることを視覚的に伝えることができる。
プロフィール欄を更新するだけなので手間はかからない。営業時間の短縮や臨時休業などの情報も載せておくと良いだろう。
反映に多少時間がかかることもあるが、無料で利用できるサービスなので、忘れずにやっておきたいところだ。
集客だけでなくロスの防止にも役立つアプリ
資金的な余裕がある場合は、グルメサイトやテイクアウトアプリなどを利用するのも一つの手だ。
飲食店の情報を集めたグルメサイトはいくつかあるが、ユーザー数の多い「食べログ」や「Retty(レッティ)」などは是非とも押さえておきたい。
いずれも2020年4月から、テイクアウトやデリバリーの表示ができるようになったので集客に役立つだろう。
基本情報だけなら無料で掲載できるが、その場合、集客効果はあまり期待できない。
より多くの消費者の目に留まるようにするためには、有料プランを利用する方が得策だ。
「食べログ」であれば月額固定費1万円と成果に応じた従量課金(100円~/人)から、「Retty」は月額1万6000円からでそれぞれ利用することができる。
テイクアウトアプリも便利だ。すでに色々なアプリがあるが、人気が高いのは「LINEポケオ」や「menu」、「O:der」といった王道のアプリや、一風変わったサブスクリプションモデルを導入した「POTLUCK」といったところだろう。
若い層の集客に役立つだけでなく、事前に予約を受け付けることができるため、作り置きによるロスを防ぐこともできる。
また、ほとんどのアプリが事前決済の仕組みを導入しているため、レジ対応をする必要がない。オペレーションを簡素化できるという点でも、導入するメリットは大きい。消費者を並ばせたり、待たせてしまうこともない。
利便性を考えれば、導入を検討してみる価値は十分にあるだろう。
問題は導入にかかるコストだ。中には初期費用無料というものもあるが、その分、月額料金が割高になっていたり、システムの基本使用料に加え、販売数に応じて一定の割合で手数料がかかるものもあるので、どれが自店のビジネスモデルに適しているのかきちんと見極めて導入を進める必要がある。
食中毒対策などリスク管理を求められる
飲食店にとって新たな収益の柱になりえるテイクアウトだが、リスクについても事前にきちんと把握しておかなければならない。
一番気を付けなければならないのは食中毒だろう。特にこれからの季節は注意が必要だ。
下手をすると命にも関わる重大な事故が起こる可能性があるだけに、衛生管理には普段以上に気を配る必要がある。
よく出来立てを提供しようと、暖かいまま食材を容器に詰めることがあるが、これがかえって菌の繁殖を助けてしまうこともある。
冷たいものと暖かいものをいっしょくたに詰めてしまうのも良くない。
気温が上昇する梅雨や夏場は、安全性を第一に、食材はいったん冷ましてから詰めたり、保冷剤を付けるなどの工夫が必要だ。
また、万が一の事態に備え、テイクアウトで使用した食材の情報は、すべて控えておくことをお勧めする。
配達代行サービスを利用したフードデリバリー業者選びのポイントは配送エリアや利用客の内訳など
デリバリー編
【STEP1:許可】始める前に保健所に確認を
デリバリーサービスを始める場合はテイクアウトと異なり、飲食店営業許可と別に資格を取得したり、届け出を出す必要は基本的にはない。
ただし、これは保健所によって見解が分かれることがあるため、一度確認しておいた方が良いだろう。
【STEP2:商品】配達時間、調理のしやすさなどの工夫が必要
■配達にかかる時間を考慮し、調理を工夫する必要がある
商品は、「受け取ったらすぐに食べられる調理済みの料理」と「受け取り後に調理が必要な料理」の2つに分類される。
ハンバーガーやピザなどのファストフードや寿司やそば、うどんなどの定番メニューが前者にあたり、温め直しを前提とした料理や、食材を詰め合わせたパッケージなどが後者にあたる。
最近は、硬めに茹で上げた麺とスープを配達し、それを購入者側で最終調理して食べてもらうデリバリー型のラーメン店も増えてきている。
どんな商品をデリバリーとして提供するかは、飲食店が個々で判断するべきことだが、いずれの場合もその特性を十分に考慮してメニュー開発する必要がある。
例えば、すぐ食べられる料理を届ける場合は、調理してから配達先に届けるまでの時間を考慮して調理方法を工夫する必要がある。
最も分かりやすいのが麺類だろう。
店舗で提供するのと同じ感覚で麺を茹でてしまうと、配達中にのびしていまい、味も触感も落ちてしまう。
電子レンジなどで温め直しができるものならまだ良いが、一度のびてしまった麺はもうどうしようもない。
配達時間を考慮して、麺は普段よりも硬めに茹でなければならない。店舗から配達先までの距離や交通事情なども頭に入れておく必要があるだろう。
受け取り後に調理をする必要があるものをデリバリーする場合も、押さえておくべきポイントがある。それは、調理のレベルは人によって差があるということだ。
複雑な工程が伴う料理は、調理する人によって味の差が出てしまう可能性がある。店としては美味しいものを提供したつもりでも、これでは悪い印象を与えてしまいかねない。
そうしたことがないよう、調理が前提となる料理については、誰が作っても美味しく食べられるものでなければならない。
高齢者、法人向けに特化するデリバリーも
■デリバリーサービスによって商圏を広げることも可能
店舗のあるエリアとデリバリーで販売する商品の関係については、基本的な考え方はテイクアウトと同じだが、いくつか違う点がある。
一つは商圏の広さだ。
一般的に、飲食店の商圏は徒歩の場合で500m、郊外など車の使用が前提となる場合は2km程度だと言われているが、デリバリーは10〜15kmと広い。
したがってサービスの対象エリアを特定の地域だけに限定せずに、隣接する地域も視野に入れた商品展開をすることも可能だ。
その方がより幅広い層の顧客を取り込むことができる可能性もある。これはもちろん、どんな配送手段を使うのかにもよるが、ぜひとも頭に入れておきたいことだ。
デリバリーに関してはターゲットを限定した特殊な展開の仕方も考えられる。
例えば高齢者専門の配食ビジネスだ。超高齢化社会を追い風に市場は拡大傾向にあるため、今なら参入する価値は十分ある。
■高齢者向け、法人向け、デリバリーサービスはさまざま
ただし、シニア向けの食事となれば、普段店舗で提供している料理以上に栄養のバランスや食事制限などに配慮する必要があり、同時にさまざまな知識も求められる。
ケアマネージャーや施設との関係作りが必要になるなど、顧客開拓にも独自のノウハウが必要だ。今やっている飲食業の延長線上ではできないこともあるだろう。
やる、やらないだけでなく、前提として自店のスタイルに取り込むことができるのか、まずは慎重に検討する必要があるだろう。
資金的な余裕があるのであれば、フランチャイズの仕組みを導入する手だ。
メニュー開発や顧客開拓の手間が省けることを考えれば、投資は決して高くないだろう。研修期間も含め、早ければ2、3週間程度で開業にこぎつけることができる。
法人向けは景気の影響を受けやすい
もう一つ、法人に特化したやり方もある。
法人顧客は個人と違い、一度の注文でまとまった数のオーダーが見込みやすい分、売上や配達効率の部分でメリットが大きい。
ただし、請求書や月末締め翌月末払いなど、支払いに関しては柔軟な対応が求められる。店舗によっては資金繰りの面で負担を感じることがあるかもしれない。
また、法人相手のビジネスは景気の影響を受けやすいという点にも注意が必要だ。好調な時は良いが、依存し過ぎると、売上が急にゼロになったりするリスクもある。
【STEP3:配送方法】アウトソーシングの利用がポイント
デリバリーを始める上で最も重要なのが、この配送をどうするかだ。
近隣に届けるだけなら、自店のスタッフを使えば事足りるかも知れないが、それだけでは配送できる量にも限界があり、たいした売上は見込めないだろう。
店舗でしっかりと稼げているときであればそれでも十分かもしれないが、今回のような一連のコロナ騒動で経営自体が立ち行かなくなりつつある中では、わざわざ手間暇をかけて準備するだけの価値はない。
そもそも飲食業界は人手不足が深刻で人件費もバカにならない。配送スタッフを一人雇用するのも容易ではない。
そこで今、熱い視線を集めているのが「UberEATS」や「出前館」「fineDine」などのデリバリーのアウトソーシングサービスだ。これは集客にも密接に関連してくる。
業者ごとに得意とする配送エリアは異なる
問題はどの仕組みを導入するかだ。
利用店舗数や利用客層、知名度、手数料、企業規模など、判断基準はいくつかあるが、最初にまず考えなければならないのが、サービスごとに得意としている営業エリアが異なる点だ。
例えば、最近話題の「UberEATS」を使って代、代などの若い層をターゲットにデリバリーをしようとしても、そもそも「UberEATS」の配送網がない場所では、サービス自体を提供することができない。
実際、「UberEATS」が利用できるのは一都三県と関西の主要都市、福岡県や広島県の一部地域などに限られている。
中には市としては対象エリアになっていても、郊外で利用できないケースもある。
利用が首都圏に限られているのは、宅配寿司「銀のさら」などを運営するライドオンエクスプレスホールディングス(東京都港区)のデリバリーサービス「fineDine(ファインダイン)」も同じだ。
こちらの場合は、現時点で利用できるのは東京都と神奈川県の一部の地域に限られる。
配送網で考えれば、「出前館」(出前館:大阪市中央区)やNTTドコモが運営する「dデリバリー」、楽天の「楽天デリバリー」、LINEの「LINEデリマ」などが広域をカバーしているためお勧めだ。
■デリバリーが業界にどこまで定着するか、今後の動向にも注目したい
ターゲットにしたい客層に応じた使い分けも必要
また、どんな属性のユーザーに、どれだけ利用されているのかについても事前にきちんと把握しておく必要がある。
例えば先程も取り上げた「UberEATS」は利用者層が比較的若く、しかも単身者が多いと言われている。
一方、「出前館」や「dデリバリー」などは20代から50代、60代まで幅広い世代に利用されていて、単身者よりも既婚者の割合が多いとされる。これは、それぞれが取り扱っている店舗からも推測できる。
こうしたことを踏まえると、ターゲットをファミリー層に絞るのであれば、前者よりも後者を利用した方が狙いたい層にリーチできる可能性は高くなるだろう。
もちろん、配送対象地域となっていることが前提だが、こうした点もサービスを選定する上で一つの判断基準になる。
もう一つ気になるのが、配達を委託した場合にかかる手数料だ。
例えば「出前館」は、初期導入費として2万円、利用料は注文金額に応じて変動する従量課金制で、サービス利用料として商品代金(税抜)の10%、さらに配達代行手数料が商品代金(税別)の30%かかる。2000円分の注文が入ると、合計800円がかかるというわけだ。
また、「UberEATS」は初期費用が5万円と若干高いものの、月額料金はかからない。配達代行手数料は商品価格の35%となっている。
他の業者を見ても、配達代行手数料については35~40%前後が相場のようだ。
新たな収益源となるほか、商圏を広げたり、接客を必要としないため人件費の削減にもつながるなど、さまざまなメリットがあるデリバーサービスだが、配達代行サービスを利用する場合は、立ち上げまでに2~3週間程度かかる点を考慮しておく必要がある。
しかも今は新型コロナウイルスの影響で、各社とも問い合わせが殺到している状況で、導入にはさらに長い時間がかかりそうだ。
この記事は、ビジネスチャンス 2020年08月号の記事になります。