キッチンカー・移動販売の定義と特徴
移動販売は実際の店舗を持たずに、専用の自動車などで商品を提供することです。
移動販売で取り扱われるものは、昔から移動販売として有名な豆腐や焼き芋などから雑貨まで、様々なものがあります。
その移動販売の一種としてキッチンカーがあります。
キッチンカーとは、車内に食品を調理する設備が備えられた車両を指し、その場で調理した料理を提供します。
キッチンカーだけでなく「フードトラック」や「ケータリングカー」などと呼ばれることもあります。
車両に備わっている設備によって、定番のクレープやケバブから和風の丼ものなど、幅広いジャンルに対応することが可能です。
近年は、カフェで提供されるような軽食メニューやランチメニューを提供するキッチンカーが人気になっており、メニューや出店場所の自由度が高いことから、新たに飲食店の開業を考えている人からも注目されています。
キッチンカー・移動販売の市場について
それでは、話題のキッチンカーの市場規模は一体どのように変化をしているのでしょうか。
画像引用元:キッチンカー - 調べる - Google トレンド
Googleが提供するGoogleトレンドというツールで「キッチンカー」という検索ワードの人気度について見てみると、2019年から現在までだんだんと上昇していることがわかります。
コロナ禍で店内飲食の自粛や規制が厳しくなり、飲食店が新たにキッチンカーでテイクアウト販売を始めるなど、新たな形態としてキッチンカーを利用するようになったことも人気が上昇した要因の1つのようです。
株式会社Mellowの発表によれば、同社が展開するモビリティビジネス・プラットフォーム「SHOP STOP」の登録店数は、2019年12月の約700店から2022年6月には1,600店以上にまで増加しており、コロナ禍前に比べて2.2倍になっています。
参考:https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000739.html
また、キッチンカーの製造・販売・出店サポートをしている「MYキッチンカー」の運営をする株式会社3Aが行った「キッチンカーの需要調査」によると、対象者500人のうち95%が「住んでいる地域にキッチンカーがある」と回答し、91%が「キッチンカーを利用したことがある」と回答しています。
同調査によるキッチンカーの利用頻度については、以下のようになっています。
利用頻度 | 回答人数 |
---|---|
半年に1回 | 267人 |
月に1回 | 163人 |
週に1回 | 18人 |
毎日~週に2.3回 | 7人 |
利用頻度 | 全体の割合 |
---|---|
半年に1回 | 59% |
月に1回 | 36% |
週に1回 | 4% |
毎日~週に2.3回 | 2% |
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000074684.html
一番回答が多い利用頻度は「半年に1回」となっており、回答した半数以上の人はまだキッチンカーを利用する頻度が高くありません。
しかし、3割以上の方が「月に1回」と回答しており、今後もさらにキッチンカーが増えていけば、キッチンカーの利用頻度もさらに高くなることが期待できます。
これらのデータから、現在の市場規模はまだそこまで大きいとは言えませんが、確実に成長しており、今後も市場規模が拡大することが予測できます。
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キッチンカーで独立開業を目指す方へ
キッチンカー・移動販売の収益構造
実際にキッチンカーを開業し利益をあげていくためには、収益の構造について把握しておく必要があります。
何に対して費用がかかってくるのかを理解した上で、どの部分にお金をかけるのかについて試行錯誤していくことがキッチンカーでの成功に繋がるでしょう。
キッチンカー・移動販売でかかる費用の内訳
キッチンカーを営業するために主に必要とされる費用の目安は、以下のようになっています。
項目 | 費用 |
---|---|
原材料費 | 30% |
交通費 | 2% |
梱包材費 | 2% |
販売促進費 | 0.5% |
消耗品費 | 0.5% |
水道光熱費 | 2% |
通信費 | 1% |
PL保険料 | 5,000~10,000円 |
車両維持費 | 約150,000円 |
その他 | 広告宣伝費や仕込み場所の家賃 |
キッチンカーの場合でも飲食店の営業許可を取得する必要があります。
飲食店営業の許可申請料は各自治体の保健所で異なりますが、目安としては10,000円~20,000円ほどです。
移動販売のため、営業する各地域で取得する必要がありますのでご注意ください。
また、固定費としてPL保険料やキッチンカーの維持費などが発生します。
PL保険料とは、生産物賠償責任保険と言われており、販売した商品が原因で食中毒が発生するなどの万が一のトラブルに備える保険です。リスクヘッジとして加入しておくことをおすすめします。 保険の契約内容や事業規模によって費用は異なりますが、5,000~10,000円程度としています。
キッチンカーとして利用する車両維持費の内訳については、後ほど詳しく説明します。
キッチンカーの用意にかかる費用
移動販売を開業するためにまず必要なのが、キッチンカーとして利用する車両の確保です。
キッチンカーを用意するためにかかる費用について、いくつかのパターンごとに解説していきます。
自分の車を改造する場合
自分で所持している車を改造してキッチンカーにする場合、各保健所の営業許可をクリアできるような形に改造する必要があります。
DIYが得意な方であれば、自分で改造することも可能ですが、移動販売車を制作している会社に改造を依頼することもできます。
DIYで改造を行う場合にかかるであろう費用の目安は以下です。
項目 | 費用 |
---|---|
自作(DIY)用工具 | 約20,000円 |
電源 | 約300,000円 |
水道、シンク関連 | 約55,000円 |
換気扇 | 約3,000円 |
収納関 | 約10,000円 |
自作(DIY)の棚や調理台など | 約20,000円 |
調理機材 | 約80,000円 |
冷蔵庫 | 約30,000円 |
合計 | 約518,000円 |
また、移動販売車の制作会社に改造を依頼をする場合の一般的な費用は以下になります。
軽バンタイプ | |
---|---|
ベース車+内装設備 | 約250万円 |
車両持ち込み、内装設備のみ | 約160万円 |
大型バンタイプ | |
---|---|
ベース車+内装設備 | 約500万円 |
制作会社に依頼をする場合は、事前に数社で見積もりを取り、比較してから依頼することをおすすめします。
キッチンカーを購入する場合
続いては、新車もしくは中古車のキッチンカーを購入する場合の費用についてです。
新車のキッチンカーの場合は、フルオーダーで改造することができるため、自分の理想のデザインや仕様にできる点が大きなメリットです。
新車のキッチンカーを購入する場合の費用相場は以下です。
車種 | 費用 |
---|---|
軽トラックベース | 200万円〜400万円 |
普通トラックベース | 400万円 |
特殊車両やバス等 | 1000万円以上 |
※導入する調理器具や外装デザインによって費用が異なります。
中古車のキッチンカーを購入するメリットは、費用が抑えられるだけでなく、改造が不要なため新車の場合よりも早く開業することが可能な点です。
中古車の費用相場は150万〜300万円ほどですが、車両の走行距離やメンテナンス歴によっても大きく異なります。
あまりにも金額が安い場合、車両自体やキッチンボックス等が破損・汚損している可能性もありますので、購入する際は慎重に検討する必要があります。
キッチンカーをレンタルする場合
キッチンカーを短期で利用することが目的なのであれば、レンタルするという選択肢もおすすめです。
レンタルについては「短期」か「長期」で大きく分けることができます。
短期レンタルは、単発のイベントなどで利用されることが多く、平日と祝日でレンタル費用が異なる場合がほとんどです。
費用相場は以下になります。
レンタル費用 | |
---|---|
平日 | 30,000~50,000円 |
土日祝 | 70,000~100,000円 |
長期レンタルでは基本的に長期割引が適用されるため、日割り計算をすると短期レンタルよりも安くなっていることがほとんどです。
安価な会社でレンタルする場合は、長期でレンタルすることで月30万円以下に費用を抑えることができます。
ただし、レンタル期間が半年から1年以上となる場合は、中古のキッチンカーを購入したり、価格を抑えて移動販売車を制作する場合と費用があまり変わらなくなることが多いです。
本格的にキッチンカーの開業を考えている方は、レンタルについては慎重に考える必要がありそうです。
ガソリン代と駐車料金がかかる
先ほどキッチンカーでかかる費用の内訳でも少し触れましたが、キッチンカーは自動車のため固定費として維持費が発生します。
また、出店場所や仕入れ先に向かう際のガソリン代や高速道路の料金など交通費もかかってきます。
キッチンカー維持費の内訳とそれぞれの費用の目安は以下になります。
項目 | 費用 |
---|---|
自動車税 | 4,000~5,000円 |
オイル交換(都度) | 4,000円 |
自動車保険 | 30,000〜40,000円 |
車検費用(2年ごと) | 50,000~100,000円 |
駐車場代 | 10,000円 |
車両の維持費は車種によって大きく異なりますが、1ヶ月15万ほどを目安として考えます。
軽バンや軽トラなどの小型車であれば、費用を抑えることができますが、車体が大きくなればなるほど費用も上がってしまいます。
保険料についても、キッチンカーは業務用車の扱いになるため、年齢制限を設定できず自家用車より高めになる傾向があります。
メニュー看板・営業スポットや時間は集客に直結
集客の観点からメニュー・看板は重要なポイントです。
どんな商品を提供しているのかがすぐにわかるような看板を使用することで、近くを通っただけのお客様にアピールすることができます。
メニュー看板は、完全にオリジナルなもので問題ないので、手作りで商品やキッチンカーのイメージに合うものを作成したり、業者に依頼してプロフェッショナルな看板やのれんを作成してもらうなど、魅力的な看板を使用して売上アップに繋げていきましょう。
また、営業する場所や時間も集客・売上に直結してくるポイントです。
このように、ターゲットの年代や職業等を絞って、ターゲットとなる人が多いスポットや時間帯を見極めて出店することで、集客に繋げていきましょう。
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キッチンカーで独立開業を目指す方へ
キッチンカー・移動販売のメリットデメリット
さて、キッチンカーで移動販売をする場合、どういったメリットやデメリットがあるのでしょうか。
それぞれについて解説していきます。
メリット
まずはメリットとしては以下の点があげられるでしょう。
実店舗を構えて開業する場合、300万〜1000万円ほど必要と言われているのに対して、キッチンカーの開業は200万〜500万円とかなり資金を抑えて開業することが可能です。
また、スペースが限られていることもあり、オーナー1人で営業することができるため、人件費もかかりません。
さらに、その時の人通りの多さや客足によっては、出店する場所を自由に移動できることは移動販売ならではの利点です。
いずれ店舗を構えたいと考えている方にとっては、まずキッチンカーで開業するというのも一つの手です。
キッチンカーで集客できれば、実店舗を立ち上げる時にすでに常連客がいたり、お店が認知されている状態でスタートすることができます。
キッチンカー販売によって、実際に店舗を持つ前からお店を宣伝することが可能です。
デメリット
続いて、キッチンカーのデメリットは以下のことがあげられます。
人通りが多く、売れやすいとされる場所には多くのライバルがいるため、出店場所を確保することが難しいと言われています。
また、無断で出店することはできないため、企業などに営業して場所を譲ってもらう必要があるため、交渉力も求められます。
様々な場所で営業できることが移動販売の魅力ですが、営業する各自治体の保健所で飲食店の営業許可を取る必要があります。
許可を取得するまでに時間もお金も要しますので、開業したばかりの頃はむやみに移動することができないケースが多いです。
さらに、スペースが限られているため、キッチンカー内にある設備仕様で調理ができる料理はある程度のジャンルに絞られてしまうことが多く、新たなジャンルのメニューに挑戦するためには改造が必要となることがあります。
そのため、キッチンカーではメニューが固定化されやすいという傾向があります。
まとめ
キッチンカーは開業費用が店舗を持つよりも安いため、これから飲食店を始めたいと考えている人にとってはハードルが低い飲食の販売スタイルです。
また、様々な場所に移動することができる点もキッチンカーならではのメリットです。
さらに、新型コロナウイルスの影響もあり、人との接触をなるべく避けながら、お店の食事を楽しむことができるキッチンカーに、興味や関心を持っている人も増えてきています。
今後もしばらくは、人々が安心して気軽に店内で飲食できるようになるまでは、時間がかかると予想されていることもあり、新たな飲食スタイルとしてさらに人気が上昇していく可能性が高いです。
飲食店の開業を検討されている方は、将来店舗を構えるために、まずはキッチンカーから始めてみるという方法も選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。