フランチャイズに加盟してビジネスを始める上でしっかりと学んでおかなくてはいけないのが、社会保険についてです。
個人事業主になると、会社の保険を抜けて自分で加入の手続きをおこなわなくてはならず、会社員とはルールが異なるためきちんと把握しておく必要があります。
また、従業員を雇うのであれば、従業員の社会保険に関する知識も備えておかなくてはいけません。
この記事では、フランチャイズオーナーが知っておくべき社会保険の基礎知識について紹介していきます。
- 社会保険の概要
- 社会保険の種類
- フランチャイズオーナーが加入しなければならない保険
- 従業員を雇う場合に加入しなければならない保険
などについても紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
社会保険とは
社会保険とは、日々の生活の中に潜む、
- 病気
- 怪我
- 労働災害
などのリスクに備えるための保険です。
国が主体となっておこなっている保険で、会社員はもちろん、フランチャイズオーナーなどの個人事業主に対しても加入が義務づけられています。
社会保険の種類
「社会保険」には、以下のさまざまな種類があります。
- 健康保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 厚生年金
- 介護保険
フランチャイズオーナーになるのであれば、それぞれどういった保険なのかについても把握しておかなくてはいけません。
それぞれの保険の概要について詳しく解説していきます。
健康保険
健康保険は、医療機関を利用した際の医療費の7割を保険金で賄ってもらえる制度です。
日本は国民皆保険制度を採用しているため、年齢や性別に関係なくすべての国民が加入しなくてはならない保険でもあります。
会社員は会社の社会保険に加入できるようになっていますが、フランチャイズオーナーなどの個人事業主の場合は国民健康保険に加入しなくてはいけません。
また、保険料の支払いは会社員のように企業との折半ではなく、全額自己負担となります。
雇用保険
労働者には病気や怪我によってある日突然働けなくなってしまうというリスクがあります。
そのリスクに備えるためのセーフティーネットとして設けられているのが雇用保険です。
雇用保険は、
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
という条件を満たしていればアルバイトやパートでも加入でき、失業してしまった場合、一定期間給付金を受け取ることができるようになっています。
失業したときだけでなく、育児や介護で休業しなくてはいけなくなってしまった場合や教育訓練を受けた場合にも受給できます。
労災保険
労災保険は、すべての労働者が加入できる保険制度です。
業務中はもちろん、通勤中に怪我を追ってしまったり病気になってしまった場合、怪我や病気に対する治療費や休業している間の補償を受けることが可能です。
また、万が一死亡してしまったり障害を負ってしまった場合の年金給付制度も備わっています。
厚生年金
厚生年金は、企業に勤務する労働者が加入できる公的な年金制度の一つです。
加入して保険料を支払った場合、国民年金に上乗せする形で相応の金額の年金を受け取れるようになります。
介護保険
介護保険は、40歳以上になる労働者に加入が義務付けられる社会保険の一種です。
介護を必要とする高齢者へのサービスの提供を支援するための制度で、将来介護が必要になるときに備える制度でもあります。
事業主が40歳以上になる場合は、介護保険料を支払わなくてはいけません。
また、40歳以上の従業員を雇用する場合、毎月の給与から控除して納付する必要があります。
従業員を雇った場合に加入しなければならない社会保険
フランチャイズに加盟してビジネスを始める中で従業員を雇った場合、先述した5つの保険に加入する義務が生じます。
これは正社員や契約社員など雇用形態によって決まるものではないため、アルバイトやパートとして雇う場合でも加入しなくてはいけません。
社会保険への加入は労働基準法で定められており、加入対象者が在籍しているにも関わらず未加入となっていることが発覚した場合、50万円以下の罰金か6ヶ月以下の懲役が課せられるので注意が必要です。
また、期間を遡って保険料を請求されることもあるため、「バレないだろう」という考えで未加入の状態のままビジネスに取り組むのは避けるようにしましょう。
従業員の社会保険への加入が任意になる条件
「従業員を雇う場合は必ず社会保険に加入しなければならない」と紹介してきましたが、保険の種類や条件によっては加入が任意となるケースがあります。
まず一つ目の条件が、雇用する人数です。
店舗や事業所で雇用している人数が5人未満の場合、社会保険への加入は任意となります。
二つ目の条件が、業種です。
- 飲食業
- サービス業
- 農林水産業
などの職種は「任意適用事業所」となるため、社会保険に加入しなくても問題ありません。
また、介護保険料については40歳以上の従業員に適用されるものであるため、40歳以上の従業員が在籍していない場合は加入する必要はありません。
個人事業主が加入しなければならない社会保険
従業員を雇わないで一人で個人事業主としてビジネスに取り組む場合も、次の3つには加入しなければいけません。
- 国民健康保険
- 国民年金保険
- 介護保険
企業に雇用されている側が加入する社会保険の保険料は会社との折半でしたが、国民健康保険は全額自己負担となります。
収入によって増減する仕組みで、収入によってはかなりの金額になる場合もあります。
国民年金保険は20歳以上の加入が義務付けられているもので、個人事業主になってもその義務をまっとうしなくてはいけません。
介護保険は40歳以上の人が対象となるもので、40歳を過ぎてからビジネスを始める場合は加入の義務が生じます。
フランチャイズオーナーになると、これらの保険への加入が義務付けられ、切り替えの手続きも自分でおこなう必要があります。
家族の保険料も負担しなければならないので要注意
個人事業主になる上で気をつけなくてはいけないのが、家族の社会保険についてです。
配偶者が働いていて会社の社会保険に加入している場合であれば切り替える必要はありませんが、配偶者が働いていない場合、国民健康保険料と国民年金保険料も負担しなくてはいけません。 お子さんがいる場合は、お子さんの人数分だけ国民健康保険料の負担も増えます。 また、配偶者の年齢が40歳以上になる場合は介護保険料の負担も増えることになります。
このように、個人事業主になると会社員のときよりも社会保険料の負担が大きくなるので注意してください。
経営者におすすめの2つの任意保険
個人事業主である経営者には、会社員と比べ物にならないほど大きく稼げる可能性がある反面、何らかの事情によって急に稼げなくなってしまうなどのリスクもあります。
それらのリスクに備えるための保険として有効なのが、個人事業主が加盟できる任意保険です。
経営者におすすめの任意保険としては、次の2つがあげられます。
- 小規模企業共済
- 経営セーフティ共済
それぞれ詳しく解説していきます。
小規模企業共済
会社員は定年まで勤めることでまとまった金額の退職金を受け取ることができますが、フランチャイズオーナーなどの個人事業主には退職金がありません。
そんな個人事業主のデメリットを解消してくれるのが、「小規模企業共済」です。
小規模企業共済は個人事業主にとっての退職金のような制度で、毎月決まった金額の掛け金を支払い、掛け金に応じた金額を引退するときに受け取ることができるようになっています。
令和2年度の共済金受給額の平均が1,130万円ということを考えると、老後の備えとして加入を検討するべきだと考えられます。
経営セーフティ共済
個人事業主と言えどもさまざまな企業と取引をおこないながら経営をおこなっているため、取引先が倒産してしまうことで連鎖倒産してしまう危険性があります。
経営セーフティー共済は、そんな連鎖倒産を回避することを目的とした保険です。
経営セーフティー共済では毎月5,000~200,000円の範囲内で積立がおこなえるようになっており、最大800万円まで積み立てることができます。 また、40ヶ月以上加入していた場合、解約したときに掛け金が全額戻ってくるというメリットもあります。
小規模企業共済だけでも十分と言えますが、ビジネスにおけるありとあらゆるリスクに対処するためにも小規模企業共済とあわせて加入を検討するべき保険の一つです。
まとめ
フランチャイズに加盟して個人事業主になる前に知っておきたい社会保険の基礎知識について紹介してきました。
個人事業主には自分の頑張り次第で大きく稼げるというメリットがありますが、すべて自分で賄わなくてはいけません。
社会保険もその一つです。
事業主自体の社会保険への加入はもちろん、従業員を雇う場合、条件によっては従業員も保険に加入させるのは経営者の義務です。
「知らなかった」では済まされませんので、独立を検討しているのであれば正しく把握しておくようにしましょう。