店舗物件探しで「居抜き物件」という言葉を目にすることがあります。
居抜き物件は、前のテナントが使用していた内装や設備などを引き継いで使える物件で、出店時のコストを抑えられる大きなメリットがあります。
一方で、既存の設備が自分の業態に合わない可能性もあり、デメリットも存在します。今回は、居抜き物件の基本的な特徴から、メリット・デメリット、向いている方の特徴、契約時の注意点まで、詳しく解説していきます。
これから店舗物件を探す方は、ぜひ参考にしてください。
居抜き物件とは
居抜き物件は、前のテナントが使用していた設備や内装をそのまま引き継いで使用できる物件のことを指します。飲食店の場合、厨房設備やカウンター、テーブルなどの備品が設置された状態で借りることができます。
一般的な物件では、入居時に内装工事や設備の設置が必要となりますが、居抜き物件ではこれらがすでに整っているため、すぐに営業を開始できるという特徴があります。
また、前テナントの営業形態によっては、給排水設備や換気設備、電気設備なども整備されており、新規に設置する手間と費用を省くことができます。
居抜き物件のメリット
居抜き物件には、開業時の負担を大きく軽減できる様々な利点があります。主なメリットを詳しく見ていきましょう。
設備や工事の費用が抑えられる
居抜き物件の最大のメリットは、初期投資を抑えられることです。新規に店舗を開設する場合と比べて、内装工事費用や設備投資が大幅に削減できます。
飲食店の場合、厨房設備や空調設備などの費用負担が軽減され、新規出店時の費用を最大で50%程度カットすることも可能です。これは飲食店だけでなく物件を借りるときも共通です。
事務所として使用する場合でも、パーテーションや空調設備などがすでに整っているため、大きなコスト削減につながります。
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開店までの期間が短く済む
居抜き物件では、基本的な設備や内装がすでに整っているため、開業までの準備期間を大幅に短縮できます。通常の物件では内装工事に2~3ヶ月かかることが一般的ですが、居抜き物件では最短で1週間程度で営業開始することも可能です。
また、飲食店の場合は保健所の審査もスムーズに進みやすく、営業許可の取得にかかる時間も短縮できます。これにより、収益を上げ始めるまでの期間を最小限に抑えることができます。
店舗としてできあがっているためイメージがしやすい
居抜き物件は実際に営業していた店舗をそのまま引き継ぐため、空間の使い方や動線、お客様の導線などを具体的にイメージすることができます。これは店舗設計の経験が少ない初めての出店でも、効率的な店舗レイアウトを実現できる大きな利点となります。
また、実際の営業スペースや収容人数なども把握しやすく、より現実的な事業計画を立てることができます。
必要な許認可がすでに取得済み
多くの居抜き物件では、営業に必要な各種許認可がすでに取得されていることが多いです。特に飲食店の場合、消防法や保健所の許可などが引き継げる可能性が高く、新規取得する場合と比べて手続きの手間と時間を大幅に省くことができます。
これにより、開業までの準備をよりスムーズに進めることが可能です。
居抜き物件のデメリット
居抜き物件には多くのメリットがある一方で、注意すべき課題もあります。以下で詳しく説明していきます。
業態にあったよい設備とは限らない
前テナントの設備がそのまま残っているため、必ずしも新規事業の業態に適していない場合があります。例えば、中華料理店として使用されていた厨房設備をイタリアンレストランとして使用する場合、調理機器や動線が最適ではない可能性があります。
また、設備が古かったり、メンテナンス状態が悪かったりする場合もあり、追加の修繕費用が発生することもあります。
イメージ通りの内外装とは限らない
前テナントのコンセプトに合わせた内外装が残っているため、新しい店舗のイメージと異なる場合があります。完全な改装を行うと、むしろスケルトン物件から始める場合より費用がかかることもあります。
特に外観や看板などは、地域での認知度や印象に大きく影響するため、変更が必要な場合は追加コストを考慮する必要があります。
店舗のイメージを引きずってしまう
以前の店舗の評判や印象が地域に定着している場合、それを払拭するのに時間がかかることがあります。特に、前テナントの評判が良くなかった場合、その負のイメージを払拭するための努力が必要になる可能性があります。
また、常連客が前の店舗と比較してしまうこともあり、新規店舗としてのブランド確立に影響を与えることがあります。
想定外の修繕費用が発生する可能性
居抜き物件では、一見問題なく見える設備でも、使用開始後に不具合が見つかることがあります。特に配管や電気設備などの目に見えない部分の劣化は、営業開始後に発覚することが多く、突発的な修繕費用が必要になる可能性があります。
居抜き物件はこんな方におすすめ
初期費用を抑えたい
新規開業時の資金が限られている方や、できるだけ初期投資を抑えたい方に最適です。特に飲食店の開業では、厨房設備だけでも数百万円の費用がかかることがあり、居抜き物件ならその費用を大幅に削減できます。
開業資金を運転資金に回すことで、事業の安定性を高めることができます。
早く開業したい
できるだけ早く事業を開始したい方にとって、居抜き物件は理想的な選択肢となります。内装工事の期間が大幅に短縮できるため、タイミングを逃さず市場参入することが可能です。
特に季節性の高い業態や、競合出店が予想される場合には、この開業までのスピードは大きな競争優位となります。
店舗運営の経験が少ない
初めて店舗を出店する方や、店舗運営の経験が少ない方にとって、実績のある店舗の設備や内装を引き継ぐことは、リスクを最小限に抑える良い方法となります。
すでに実践的なレイアウトが確立されているため、効率的な店舗運営のノウハウを学ぶことができます。
居抜き物件の注意点
居抜き物件を借りる際と退去の際、下記の点を注意しておくとよいでしょう。
居抜き物件を借りるとき
居抜き物件では、設備や内外装を引き継いで経営します。借りる際には、とくに設備面に関してよく確認しておきましょう。
あまりにも劣化しており動作に問題があるようであれば、すぐに修理しなければならないなど経営に支障が出ます。
もし借りる前にそういった部分を見つけた場合、貸主や仲介業者で事前に修理してもらえるのか、借主がすべて修理するのか確認しておくとよいでしょう。
内外装は最低限満足できるものを選ぶのが賢明です。
店舗のイメージとまったく合わない、もしくはデザインが気に入らないなどあれば、売上不振や経営のモチベーション低下につながることがあり得ます。
前店舗の撤去理由も、事前に必ず確認すべき事項です。前店舗は何らかの理由があって撤退しているのを忘れてはいけません。
- 開店してすぐに閉店した
- 近隣の評判が悪かった
といった問題がなかったか、よく確かめておきましょう。
また居抜き物件の特徴として、「造作譲渡料」を請求されるケースがあります。
造作譲渡料とは、居抜き物件の内外装や設備を新たな借主が買い取る費用を指します。
造作譲渡料が別途かかるのか、もしくは賃料に含まれるのか、事前に確認しておいた方がよいでしょう。
居抜き物件から退去するとき
退去時には原状回復義務の範囲を明確にしておく必要があります。特に、設備の撤去範囲や内装の現状回復について、契約時に詳細を確認し、文書化しておくことが重要です。
また、次のテナントへの引き継ぎがスムーズに行えるよう、設備や内装の図面、取扱説明書なども整理しておくことをお勧めします。
まとめ
居抜き物件は、初期費用の削減や開業までの期間短縮など、多くのメリットがある一方で、既存設備の制約や想定外の費用発生などのデメリットもあります。
物件選びの際は、自身の事業計画や予算に照らし合わせて、メリット・デメリットを慎重に検討することが重要です。また、専門家に相談しながら、契約内容や現状確認を丁寧に行うことで、より安心して居抜き物件を活用することができます。