事業計画書とは
飲食店における事業計画書とは、開業するにあたり金融機関や投資家からの出資を促すため、事業内容と収支計画などをまとめた書類を指します。融資を受ける金融機関などの出資元によって種類があり、決まった書式はありません。
この事業計画書は融資を得るためだけでなく、自身の事業計画がどの程度実現できるのか、どういった事業を展開していきたいのかを客観的に判断する材料になります。
開業の際に役所への提出が義務づけられているわけではありませんが、安定的に経営していくため、また将来的に事業規模を拡大するためにも作成することが望ましいでしょう。
事業計画書の主な役割・必要性
飲食店の開業には1,000万円以上の開業資金が必要になることもあり、ほとんどの方は金融機関などから融資を受けることになるでしょう。
その際、金融機関から融資を受けるためには以下の資料が必須となり、そのなかの1つが事業計画書となります。
- 試算表
- 決算書
- 損益計算書
- 貸借対照表
- 資金繰り表
- 借入申込書
- 金融機関取引先一覧表
- その他の書類(本人確認書類や印鑑証明等)
- 事業計画書
特に事業計画書を元に出資の可否を判断されるので、事業として勝算のある内容にする必要があります。
また、先述したように事業計画書には自身の事業計画がどの程度実現できるのかを客観的に判断する役割も持ちます。そのため、自己資金による開業の場合であっても、事業計画書は作成しておくのがベストでしょう。
事業計画書の作成タイミングに関しては、開業予定日の1年前には作成しておくのが理想的です。遅くても融資の申し込み日の3ヵ月前までには作成しておきましょう。
業種によって書き方に違いはあるのか
事業計画書の内容は業種によって微妙に異なります。しかし、ポイントを外さす基本的な考え方を理解していれば応用も可能です。
次の章では、そのなかでも飲食業界に特化した事業計画書のポイントを記載していきます。
飲食業界の事業計画書に記載する項目とポイント
事業計画書には事業者の夢を記載するだけではなく、事業として勝算のある具体的な事業計画を記す必要があります。
そこでこの章では、飲食業界の事業計画に記載する項目とポイントについてご紹介します。ただし、金融機関によっては事業計画書の作成様式が決められていることもあるので、事前に確認してみてください。
事業者・事業者メンバーの情報
平たく言えば「私または私達はこういう人たちです」ということを示す項目です。
創業時の事業主には会社としての業績がないので、勤務時代に身につけたスキルや強み、実績が参考にされます。特に飲食業界経験者の場合、事業の勝算イメージが融資担当者に伝わりやすいので、融資が通りやすい傾向にあります。
飲食業界での勤務経験がある方、飲食業界に関連する資格やスキルを持っている方は、以下のようなアピールポイントがある場合は必ず記載しましょう。
- 店舗の売上管理の経験がある
- 新メニューの考案をしていた経験がある
- 食材の仕入れをしていた経験がある
- 料理コンテストで入賞経験がある
- 何かしら食・料理・栄養に関する資格を持っている
事業内容
どんな飲食店なのかを説明するのがこの項目です。「飲食店」や「ファストフード」と抽象的に書くのではなく、「エスニック料理屋」「つけめん専門店」「イタリアンレストラン」「ハンバーガーショップ」などと具体的に書きましょう。
特に飲食店はお店のタイプとその立地がマッチしないと成功しません。事業計画書を書くことで、「この立地で、この客単価のイタリアンレストランは勝算があるのか?」など客観的に判断することができ、問題があれば開業前の段階で軌道修正ができます。
商品情報・商品の生産方法・仕入れについて
どのような商品を売っていて、その生産、仕入れはどのように行っているのかを説明するのがこの項目です。
商品情報に関してですが、ポイントは「どんなメニューをいくらで提供するか」を明確に記入することです。例えば、ランチ帯とディナー帯を設けているイタリアンレストランであれば、それぞれのコース料理の内容と価格がわかるように記入します。(例:ランチコース(オードブル、パスタ、ミニサラダ、スープ、ドルチェ 2000円)
また、どんなにその商品自体の質が良くても、「安く仕入れて、高く売り利益を出す」は大前提です。とはいえ、仕入れ先や商品の生産方法が粗悪なのも問題です。
融資担当者が出資に対してポジティブになってもらうためにも、安全面の担保された仕入れ先や商品の生産方法を記載しましょう。
収益情報・収益の計画
事業計画書の中でも、「いくらの経費がかかり、いくらの利益が上がるか」は特に重要視され、その売上が見込める根拠を論理的に説明できていないと、融資の審査に影響します。
売上高は「客数×客単価×1ヶ月の稼働日数」で算出しますが、お店によってはランチとディナー、平日と休日、テイクアウトなどで客単価や来店数が異なるので、それぞれ算出する必要があります。客数や客単価の目安が分からない場合は、エリアマーケティングを専門に行っている会社に相談しましょう。
そして、売上高から店舗運営に必要なランニングコストである、
- 食材の仕入れ費
- 家賃
- 光熱費
- 人件費
- 広告費
- 水道光熱費
などを引いたものが利益となります。売上に対してそれぞれのコストが何%を占めるのか把握しておきましょう。収支計画では、全体で利益が出るか否かが非常に重要なので、利益が出ないようであれば業態の見直しが必要になります。
そのほかにも、
- 平常時・好調時・低調時の3パターンの売上計画
- 商圏分析レポート
- 販促計画
を合わせて添付することで、融資担当者に計画の具体性および合理性をアピールすることができます。
こうした収益情報および収益計画に関しては、開業当初から1ヵ月ごとに計画を立て、3年分の計画を組んでおくことをおすすめします。
新商品・新メニュー・新規取組に関する計画・融資の必要性
この項目は、日本政策金融公庫の貸付制度のうち「中小企業経営力強化資金」を利用する際に、「新商品や新役務を作る」ということが前提になっているので記載する必要が出てきます。
主に自身の店舗で提供する新商品・新メニュー作りや、お客様がお金を支払う新サービスを企画しているかどうかを記載しましょう。特に構えることなく普通に店舗の紹介やメニューの紹介をすれば問題ありません。
新規取組の例としては、「再来店を促すために次回利用できる割引券を配布した」などが当てはまります。
飲食業の事業計画書作成のフォーマット
事業計画書を作成した経験がない方からすれば、作成例がなければ作ろうにも作れないとお思います。とはいえ、事業計画書には決まった作り方(書式)がないので、必要項目さえ書かれていればExcelなどでも問題ありません。
ここでは事業計画書の作成パターンを3つご紹介します。
①日本政策金融公庫のひな形を利用する
以下の日本政策金融公庫の公式ホームページにアクセスして、 創業融資の利用時に必要な事業計画書(創業計画書)の雛形をダウンロードします。
日本政策金融公庫|借入申込書等ダウンロード
URL:https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
上記サイトからダウンロードできる事業計画書であれば、日本政策金融公庫で融資を受ける際だけでなく、他の金融機関などから融資を受ける際にも利用できます。
②ネットでテンプレートサイトを検索する
インターネットで「事業計画書 飲食店 テンプレート」などのキーワードで検索し、上位に出てきたテンプレートサイトから事業計画書の雛形を無料でダウンロードできます。ただし、日本政策金融公庫の雛形に比べて項目が少ないので足す必要があります。
【テンプレートサイト例】
biz ocean|事業計画書_02_飲食店
URL:https://www.bizocean.jp/doc/detail/500225/
テンプレートサイトには事業計画書の雛形に加え、事業経営に使える商品原価一覧表などの他の雛形もダウンロードできます。
③Excelで自作する
①や②で紹介した方法ではなく、Excelを使用して事業計画書のフォーマットを自作しても問題ありません。内容は日本政策金融公庫の雛形に合わせ、その他の項目の順番やレイアウトは自由にカスタマイズしましょう。
事業計画書は代行会社に依頼や相談が出来る
事業計画書代行会社は、融資を通す為の事業計画書を作成するプロです。資料を作成するだけではなく、企業する業界のデータ分析、起業・経営アドバイス、資金調達が成功するまでのサポートなどをしてくれます。
各会社でサポート内容は変わりますが、良くあるサービス内容としては、
- 損益計算書、月別資金繰り表、事業内容説明書などの作成
- 起業する業界のデータ分析
- 成功事例を元に現実的な資金調達金額の決定
を行っています。どんなにビジネスプランが優れていても、事業計画書でそれを表現する事はなかなかに難しいので、プロに依頼して融資を確実に受けるようにしましょう。
代行会社の相場
事業計画書代行の相場は、各会社のサービス内容によって金額に差が出るため、一律でいくらとは言えません。
一般的な費用としては、資金調達金額の2%が目安となります。
例:800万円の資金調達をした場合 資金調達した額の約2%=16万円が費用
また、成果報酬型を採用している代行会社もあり、その場合の費用は5%から10%が目安となります。
例:800万円の資金調達をした場合 資金調達した額の約5%から10%=40万円から80万円が費用
なかには安い金額を提示している代行業者はあることにはありますが、大方バックエンド商品を売る為のフックとなっていることが多いので注意が必要です。
まとめ
融資担当者は、創業者が提出した事業計画書を元に返済が可能かどうかを判断しますので、内容や書式がお粗末だと開業のための資金調達ができません。
とはいえ、創業者の飲食店開業にかける熱い思いや、売上や利益の根拠を論理的に記載するなど、融資担当者を納得させる内容を具体的に記載していれば問題ありません。