キッチンカーを開業する場合、加入を検討しなくてはならない保険があります。
保険は万が一に備えて加入するべきサービスですが、キッチンカーが加入するべき保険にはどういったものがあるのでしょうか?
また、それらの保険に「本当に加入する必要があるのか」という点についても事前に考えておかなくてはいけません。
この記事では、キッチンカーを開業し、営業する上で必要になる保険について紹介していきます。
- キッチンカーが加入するべき保険の概要
- 保険の必要性
- 保険に加入する上での注意点
などについて解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
キッチンカーの開業・営業に必要な3つの保険
キッチンカーの開業・営業にあたり必要になる保険としては、
- PL保険(生産物賠償責任保険)
- 自動車保険
- 施設賠償責任保険
の、3つがあげられます。
それぞれの保険の概要と必要性について解説していきます。
1. PL保険(生産物賠償責任保険)
PL保険は、「生産物賠償責任保険」とも呼ばれる、企業や事業主向けの保険です。
PL保険は企業や事業主が製造した製品を対象とする保険で、キッチンカーの場合だと、調理して販売する食品が賠償の対象になります。
キッチンカーを営業する際、
- 販売した食品を食べたお客さんが食中毒を発症してしまった
- スープやコーヒーなど熱い商品を提供する際に手を滑らせ、お客さんを火傷させてしまった
- 商品を提供する際、不注意でお客さんの服や持ち物を汚してしまった
など、さまざまなトラブルに見舞われてしまうリスクがあります。
これらの万が一のリスクに備えて加入するのが、PL保険です。
賠償金の金額はトラブルの内容や損害の規模によって異なりますが、トータルの賠償金額が10万円以上になるケースも少なくありません。
大規模な食中毒を発生させてしまった場合、賠償金額が100万円以上になってしまうケースも考えられます。
PL保険に加入していない状態で数百万円規模の賠償が必要になってしまった場合、ビジネスの存続を左右してしまいかねません。
そのため、キッチンカーを開業するのであればPL保険への加入は必須だと言えますし、営業する上でPL保険の加入を義務付けている自治体もあります。
PL保険の掛金は良心的で、年間数千円の負担で加入できるものも少なくありません。
ただ、掛金については売上の規模や保険商品によって異なるので、ホームページなどで確認するようにしてください。
2. 自動車保険
キッチンカーを営業するとなると、毎日のように自宅や会社から出店場所まで、また帰りも同様にキッチンカーを運転していかなくてはいけません。
これまでほとんど車を運転する機会がなかった人も、キッチンカーを営業する以上は車を運転する機会が一気に増えます。
そこで必要になってくるのが自動車保険です。
キッチンカーを購入する場合、自賠責保険と呼ばれる強制保険に加入しますが、自賠責保険で保証されるのは最大でも4,000万円までです。
万が一、人にケガを追わせて後遺症が残ってしまったり、死亡させてしまった場合、4,000万円以下の賠償で済むケースはほとんどありません。
億単位での賠償を求められることになります。
重大な事故を引き起こしてしまうとビジネスどころではなくなってしまうので、キッチンカーを開業するときは必ず任意の自動車保険にも加入するようにしてください。
3. 施設賠償責任保険
キッチンカーでビジネスを始めると、先ほど紹介したPL保険や自動車保険でまかなえないような事故が発生してしまうことも少なくありません。
そこで加入しておきたいのが施設賠償責任保険です。
あくまで一例ではありますが、施設賠償責任保険でまかなえる事故やトラブルの事例としては、
- 看板などの販促物が風に飛ばされてお客さんがケガをしてしまった
- 車両から漏れ出た液体や油によって出店場所を汚してしまった
- キッチンカーの扉でお客さんにケガをさせてしまった
などがあげられます。
施設賠償責任保険に加入しておくと、こういった不測の事態に対応できるようになります。
施設賠償責任保険はPL保険や自動車保険と比較すると若干優先度の低い保険ではありますが、加入しておくことでより安心して営業できるので、なるべく加入しておきましょう。
ただ、台風などの自然災害による事故は補償の対象外となってしまうケースも少なくないため、補償の内容を事前に確認し、最適だと思われるものに加入するようにしましょう。
キッチンカーの自動車保険に関する基礎知識
キッチンカーを開業・営業する上で必要になる自動車保険ですが、キッチンカーは一般的な車両ではないため、加入する上で必要になる知識も異なります。
キッチンカーの自動車保険に関して把握しておくべき基本的な知識としてあげられるのは、以下の3点です。
- キッチンカーの自動車保険は保険料が高額になりやすい
- 車両保険を付けておくとより安心できる
- 8ナンバーの車は加入できる保険が限られている
それぞれ詳しく解説していきます。
キッチンカーの自動車保険は保険料が高額になりやすい
キッチンカーは、一般的な車両とは異なります。
車両の後部にキッチンの設備を搭載し、調理がおこなえるようになっているため、特殊な車両として取り扱われます。
そこで注意しなくてはいけないのが、自動車保険の保険料についてです。
キッチンカーは、
- 複数の用途がある
- セカンドカー割引が適用されない
- 運転者の条件を設定できない
などの理由から、保険料が高くなりやすい傾向にあります。
実際の金額は加入する保険や保証の内容によって異なるため一概には言い切れませんが、月の保険料が数千円程度高くなるケースも少なくありません。
そのため、一般的な車両に対する保険に加入する場合よりも慎重に検討する必要があります。
8ナンバーの車は加入できる保険が限られている
車に付与されるナンバーにはいくつか種類があり、キッチンカーなどの特殊な車両は「特種用途自動車」に分類され「8ナンバー」と呼ばれるナンバーを付与されます。
この8ナンバーの車が加入できる自動車保険は、元々一般的な車両向けの自動車保険に比べて保険料が安く設定されていました。
しかし、特殊な加工を施した8ナンバーの車両で保険に加入し、後から一般的な車両に戻すという悪質な手口が急増してしまい、一般的な保険会社では8ナンバー向けの保険商品の取り扱いが廃止されるようになりました。
現在は、専門の業者のみが取り扱う保険になっているため、8ナンバー向けの車両保険は一般的な車両に比べて保険に加入しづらく、保険料も高くなる傾向があります。
車両保険を付けておくとより安心できる
キッチンカーを開業する際、多くの方が頭を悩ませることになるのが車両保険についてです。
ここまで紹介してきたとおり、キッチンカーを開業するのであれば自動車保険への加入は必須でしすが、車両保険を付帯するかどうかは人それぞれです。
車両保険とは、ものや人に対しての保険ではなく、事故を起こしてしまった車両に対する保険です。
自動車保険に車両保険を付帯すると月々の保険料も高くなってしまいますが、万が一事故を起こして車両が破損してしまった場合、その修理にかかる費用を保険でカバーできるようになります。
キッチンカーの場合、車両保険を付帯させておくとキッチン部分などキッチンカーならではの特別な設備も保険の対象となるので、万が一に備えて車両保険を付けるオーナーは少なくありません。
少しでも保険料を安くしたい場合や、車両の修理を自分でおこなえるという方であれば付けないという選択肢もありますが、それ以外の方はなるべく付けるべきでしょう。
まとめ
キッチンカーを開業・営業する際の保険について紹介してきました。
キッチンカーの開業にはまとまった資金が必要になり、ビジネスが軌道に乗るまでの間は保険料の支払いも厳しいと感じて、「落ち着いたら加入しよう…」と考えるオーナーも少なくありません。
しかし、事故はいつ発生するかわかりませんし、自動車事故は賠償が高額になってしまうことが多いです。
キッチンカーでのビジネスをスタートさせるのであれば、最低でも、
- PL保険(生産物賠償責任保険)
- 自動車保険
- 施設賠償責任保険
には加入しておくことをオススメします。
「賠償によってビジネスを続けることが難しくなってしまった…」という事態を避けるためにも、開業するタイミングで加入しておくようにしましょう。