近年、社会情勢の変化により、中食やデリバリーの需要が劇的に増加しました。
国の主導のもと、テレワーク(リモートワーク)の促進がなされ、巣ごもり需要が増加したためです。
そんな中、フードデリバリーに特化した飲食店の新しい業態として、「バーチャルレストラン」が注目されています。
この記事では、飲食業界に携わっている人や、新しいフードデリバリーの形式について知りたい人に向けて、バーチャルレストランとは何か、基本的な部分を詳しく説明していきます。
バーチャルレストランとは
バーチャルレストランとは、実店舗とは違う業態の店舗を、フードデリバリー専門店として開業したものを指します。
たとえば、居酒屋として営業中の店舗が、デリバリー専門の唐揚げ屋を開業する場合に該当します。
バーチャルレストランの最大の特徴でありメリットは、実店舗の既存設備を生かしながら、空いた時間(アイドルタイム)を使って、副業的に飲食店の売上を伸ばせることです。
バーチャルレストランの仕組み
バーチャルレストランは、実店舗を営業する飲食店が、副業的にデリバリー専門店を営業しているものです。
バーチャルレストランでは、集客・注文の受注・決済・配達に関するオペレーションが、すべてオンライン(インターネット)上で行われます。
そのため、実店舗では、バーチャルレストランで注文された商品を調理して、提携する配達業者に引き渡すだけで作業が済みます。
バーチャルレストランを導入した飲食店は、実店舗の営業と調理に集中しながら、デリバリーの売上を増やせるという恩恵を受けられるのです。
既存の調理設備や店舗のアイドルタイム(隙間時間)、手の空いた人材を有効活用して売上を増やせる、というのはバーチャルレストランの大きなメリットと言えるでしょう。
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バーチャルレストランと他業態との違い
バーチャルレストランに類似する業態として、「ゴーストレストラン」「フードデリバリー」があります。
それぞれの業態と特徴、バーチャルレストランとの違いについて解説します。
● バーチャルレストラン
- 店舗を保有する飲食店が、副業的にデリバリー専門店を営業する業態のこと。
- バーチャルレストランで提供する商品は実店舗で提供しない、という特徴がある。
- 実店舗ではイートインやテイクアウトといったサービスも行い、実店舗にデリバリーの注文があった際には実店舗用のメニューを提供する。
● ゴーストレストラン
- 実店舗を持たない飲食店が、フードデリバリー向けの商品のみを提供する業態のこと。
- ゴーストレストランでは、注文や配達は自社ではなく、他社のプラットフォームを利用するという特徴がある。
- バーチャルレストランとの違いは、ゴーストレストランは店舗が存在せず、イートインやテイクアウトといったサービスがないこと。
● フードデリバリー
- 同店舗を保有する飲食店が、注文から配達まで一貫して行う、いわゆる「出前」の業態のこと。
- イートインやテイクアウトの有無は問わないが、店舗で提供される商品はすべてデリバリーと同一、という特徴がある。
- バーチャルレストランとの違いは、フードデリバリーでは実店舗とデリバリーで同じ商品を扱っていること。
バーチャルレストランの開業方法
バーチャルレストランを開業するには、飲食系のフランチャイズに加盟する方法が一般的です。
なぜなら、バーチャルレストランでは、実店舗で取り扱っている商品とは別に、デリバリーに特化した商品の開発が必要だからです。
通常、実店舗を営業しながらデリバリー特化の商品を新たに開発する場合、時間や人的なコストがかかりますよね。
しかし、フランチャイズに加盟する場合、バーチャルレストラン向けにデリバリーに特化した商品がすでに用意されており、開発コストをかけずに済むのです。
さらに、フランチャイズに加盟すると、最短で申し込みから二週間程度でバーチャルレストランの開業が可能というメリットもあります。
イートインやテイクアウトの売上が伸び悩んでいる飲食店にとって、コストをかけずに早期にデリバリーの販路を増やせるのはフランチャイズの大きな魅力です。
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フランチャイズに加盟してバーチャルレストランを開業するまでの流れ
フランチャイズに加盟してバーチャルレストランを開業するには、まず、どのような商品を扱うかを決めましょう。
バーチャルレストランで注文された商品を提供する際、実店舗の既存設備を使うだけでなく、食材の併用を行うことで、オペレーションやコストの削減になるからです。
たとえば、実店舗で大量に野菜を仕入れている場合、サラダボウルなど野菜の取扱いがあるバーチャルレストランを開業すると、無駄がありません。
なお、フランチャイズに加盟する場合、申し込み後にフランチャイザー(フランチャイズにおける親会社)による開業場所などの審査があります。
審査に問題がなければ、フランチャイズ契約を交わし、調理方法や提供方法についての研修を受けます。
バーチャルレストランの場合、実店舗をすでに保有している人が契約するので、保健所に申請して新たに開業許可を得る必要はありません。
なお、注文を受けるための機器(ネットで注文を受注する専用のタブレットなど)や、提供用の容器、食材などの提供方法については、各フランチャイズにより異なります。
フランチャイズの場合、バーチャルレストランの開業で工事が必要となることは、めったにありません。
調理設備は実店舗に備え付けのものを使用し、新たに調理器具が必要となった場合のみ購入します。
そのため、コストをかけずにバーチャルレストランを開業したい人は、フランチャイズへの加盟が非常におすすめです。
バーチャルレストランを開業する際の注意点
バーチャルレストランを開業する際、注意すべき点が4つあります。
事前に市場調査する
バーチャルレストランを開業する前に、商圏の市場調査を行ってください。
商圏とは、見込み客が暮らしている範囲など、店舗が集客できる範囲のことです。
デリバリーサービスの商圏は、目安としておよそ3kmと言われています。
営業中の店舗と同一商圏内で需要がある商品は何か、ライバル店はどの程度あるかなどの調査を行ってから、バーチャルレストランで取り扱う商品を決定しましょう。
作業スペースや在庫管理に気をつける
バーチャルレストランでは、実店舗に備え付けの調理設備や調理器具を利用します。
同一店舗内で複数店舗の調理を行うことになるため、それぞれの店舗の食材・包材の管理場所や作業スペースの確保を必ず行ってください。
実店舗の営業中にバーチャルレストランの注文が入ったとき、混乱することのないように注意が必要です。
たとえば、「何がどこにあるのかわからない」「どの食材や包材を使えばよいのかわからない」「作業スペースが足りない」といったような、調理オペレーションのトラブルを防ぐことができるでしょう。
配達業者が迷わず商品受け取りできるようにする
バーチャルレストランは、実店舗を営業中の飲食店が、副業として展開するデリバリー専門店です。
バーチャルレストランは、集客・注文・決済をオンライン(インターネット)上で済ませるため、実店舗に看板は出ていません、
よって、提携する配達業者が、商品の受け取り場所を迷わないように、バーチャルレストラン側の配慮が必要です。
受け取りが遅れて配達に時間がかかったり、商品が冷めたりすると、顧客からのクレームが発生するリスクがあるからです。
実店舗にバーチャルレストランの店舗名を出すのが難しい場合、デリバリーの商品受け渡し場所を店頭に明記するとよいでしょう。
必要な資格について確認しておく
バーチャルレストランは飲食店の業態のひとつなので、開業には「食品衛生責任者」と「飲食店営業許可書」が必要です。
実店舗を営業中の飲食店のオーナーが、副業としてバーチャルレストランを開業するのであれば、すでに必要な資格は取得しているでしょう。
しかし、実店舗を持たずにゴーストレストランを開業する場合には、資格の取得と保健所からの許可が必要となります。
あわせて、フランチャイズ本部(フランチャイザー)と必要な資格や許可について、すり合わせをしておくと確実です。
なお、バーチャルレストランのようなフードデリバリー特化の業態は、日本ではまだ新しい存在です。
そのため、今後法改正があった場合には、バーチャルレストランの開業に必要な資格や許可が変わることもありえます。
バーチャルレストランの3つのメリット
バーチャルレストランを開業するにあたって、大きなメリットとして考えられるのは次の3点です。
- 初期費用を抑えられる
- 運営コストの増加が少なく済む
- 店舗規模や天候に左右されにくい
それぞれのメリットについて、詳しく説明します。
初期費用を抑えられる
店舗を開業するにあたっては、通常では物件の選定から始まり、調理場や内外装、従業員の手配など多額の費用がかかります。
バーチャルレストランでは、基本的に既存店舗の調理器具を使います。
商品提供はデリバリーのみとなるので、内外装費用や物件の家賃がかかりません。
また人員についても既存の人員で運営すれば、新たに雇用などでかかる費用も抑えられます。
必要となる機材や器具のみをそろえるだけで営業開始できるので、初期費用が大きくかからないのは魅力的だといえるでしょう。
運営コストの増加が少なく済む
運営に関しては、実店舗の調理器具を使用して、調理のみを実施する形となります。
注文や配達は別のプラットフォームを使用するので、そこにかかる人件費はありません。
調理したものをデリバリーにて提供するだけの運営なので、そもそも接客に関する人件費は0となります。
提供する商品については、手軽に調理できるものが多いのが特徴です。
そのため、忙しくなった場合でも調理人員の増員は最小限で済みます。
運営するにあたって人件費の増加が少なく済むのは、運営上大きなメリットだといえます。
店舗規模や天候に左右されにくい
バーチャルレストランの商品提供は、デリバリーのみとなっています。
スムーズに調理できる環境さえ整っていれば、店舗規模に関係なく商品提供が可能です。実店舗のように「席数が不足して来店した顧客を待たせる」という状況になりません。
また夜営業のみの居酒屋形態の店舗でも、昼の空き時間を利用した運営が可能となります。
実店舗の運営では、悪天候時に来客の大幅減が予想されます。バーチャルレストランはデリバリーなので、注文数が天候に左右されません。
むしろ天候が悪いことで注文が増え、実店舗の売上減をカバーできるという一面も持っています。
バーチャルレストランの3つのデメリット
バーチャルレストランを運営するには、メリットだけではなく次のデメリットも考慮しておいた方がよいでしょう。
- 店舗のプロモーションがしにくい
- 顧客との関係は作れない
- バーチャルレストラン特有の費用がかかる
これら3つのデメリットについても、順に説明します。
店舗のプロモーションがしにくい
バーチャルレストランは、オンライン上で運営する店舗です。
そのため、実店舗とは違ったプロモーション戦略が必要になります。実店舗のように、内外装の雰囲気などでの集客は見込めません。
また顧客はデリバリーだけの利用となるため、デリバリー利用者以外の認知度を上げにくいという面があります。
さらに利用するアプリによっては登録されている店舗数が多く、自分の店舗が検索されにくいケースが考えられます。
クーポンやチラシ配布、店舗のWebページ作成、SNSの利用など、実店舗とは違った施策を考えなければならないのが難点といえるでしょう。
顧客との関係は作れない
バーチャルレストランでは、配達は別業者に委託しています。
そのため顧客とのコミュニケーションを直接取れず、関係性を構築できません。
実店舗に来店してもらう場合、顧客の反応が直接確認できます。顧客側にとっても、どのような店舗でどのように調理されているか確認できます。
バーチャルレストランでは、そういった顧客からのフィードバックをほとんど得られません。
そのためメニューやサービス改善に顧客の意見を反映できず、リピーターを作るには提供した商品にすべて依存する形となります。
バーチャルレストラン特有の費用がかかる
バーチャルレストランでは、実店舗の運営コストはそれほど増加しません。
しかしながら、当然といえば当然ですが、バーチャルレストランを運営するためのコストが別にかかります。
- 加盟金
- 保証金
- フランチャイズのロイヤリティ
- 調理器具のレンタル代
- 配達業者の手数料
- デリバリー容器代
などがそれにあたります。
バーチャルレストランの売上については、このあたりの費用が引かれるというのを念頭に置いた戦略が必要となってくるでしょう。
自店舗にバーチャルレストランを導入するかどうか決める場合、これらのメリットやデメリットを考慮して、総合的に判断するのが賢明だといえます。
まとめ
ここまで、バーチャルレストランについて詳しく説明してきました。
実店舗を持つ企業においては、非常に魅力的な選択肢の一つだといえます。
しかしながら、導入にはメリットだけではなく当然デメリットもあります。
自店舗のオペレーションや市場を考えてみて、導入できそうなものがあれば検討してみてはいかがでしょうか。