個人でケーキ屋さんを開業したいと考えている人も多いのではないでしょうか。
手作りの温かみのある商品を提供できる魅力から、多くの人が開業を夢見ています。
しかし、実際の経営にはさまざま課題があり、開業後3年以内に閉店する店舗も少なくありません。本記事では、ケーキ屋の経営における現状の課題と、成功に導くための具体的な方法について詳しく解説します。
「ケーキ屋の経営は難しい」と言われる理由
ケーキ屋の経営を難しくしている理由は、以下の3つです。
- 材料費の高騰
- 季節による売上の変動
- 技術力の維持向上の必要性
特に個人経営の小規模店舗では、これらの課題への対応が経営を左右する重要な要素となっています。
それぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください。
材料費の高騰
近年の原材料費の上昇は、ケーキ屋の経営に大きな影響を与えています。特にバターなどの乳製品の価格上昇が著しく、2023年1月〜7月には、前年同期比でバターが8%以上も値上がりしました。
また、小麦粉や砂糖などの基本的な材料も値上がりが続いています。
大手チェーン店と違い、仕入れ量が少ない個人店では、これらの原価上昇分を販売価格に転嫁することが難しい状況です。
この状況に対応するため、成功している店舗ではさまざまな工夫をおこなっています。
例えば、地元の生産者と直接取引をおこない、仕入れコストを抑える努力や、季節の素材を活用して付加価値を高める工夫などです。
また、原材料の無駄を省くため、製造工程の見直しや、端材を活用した商品開発などもおこなわれています。重要なのは、品質を落とさずにコストを管理する視点です。
季節による売上の変動
ケーキ需要には大きな季節変動があります。クリスマスやバレンタインなどの特定時期に売上が集中し、それ以外の時期は来客数が大幅に減少します。
この売上の波を管理することは、資金繰りの面で大きな課題となっています。また、季節商品の在庫管理も難しく、廃棄ロスが経営を圧迫する要因となっています。
この課題に対して、成功している店舗では年間を通じた需要の平準化を図っています。
例えば、春は入学・卒業シーズン、夏は暑さ対策商品、秋は収穫祭など、季節ごとのイベントに合わせた商品展開をおこなっています。
また、平日の集客対策として、カフェスペースを設けたり、ケーキ教室を開催したりするなど、副収入源の確保も重要な戦略となっています。
技術力の維持向上の必要性
菓子作りの技術は日々進化しており、常に新しい技法や商品開発が求められます。職人の技術向上のための時間確保や、新商品開発のための試作費用が必要です。
さらに、デコレーションの技術習得には長期間の訓練が必要で、人材育成にかかるコストも無視できません。
また、SNSの普及により、見た目の美しさや独創性がより重要になっています。写真映えする商品開発には、従来の製菓技術に加えて、カラーコーディネートやフードスタイリングの知識も必要です。
さらに、アレルギー対応や健康志向の高まりにより、代替材料を使用した商品開発のスキルも求められています。このように、求められる技術の幅は年々広がっているのです。
個人ケーキ屋の生存率
一般的な飲食店は、開業後3年以内で約70%が廃業すると言われています。
ケーキ屋に関しては正確な数字はありませんが、同水準で考えたほうがいいでしょう。失敗の主な原因は、初期投資の回収の遅れと固定客の確保の難しさにあります。
一方で、開業から5年以上継続している店舗の多くは、地域に根付いた営業スタイルを確立し、安定した経営を実現しています。
成功している店舗に共通するのは、開業前の周到な準備です。
市場調査や競合分析、詳細な事業計画の策定など、経営面での準備を入念におこなっています。
また、技術面でも、開業前に十分な修行期間を設け、基礎技術の習得に加えて、独自商品の開発にも時間を掛けています。
さらに、開業後も定期的に経営状態を見直し、必要な改善をおこなう姿勢が重要です。
個人のケーキ屋の経営方法・売上の作り方
成功している個人ケーキ店には、以下のような共通点が見られます。
- 家族経営で人件費を抑える
- 廃棄ロスを最小限に抑える工夫
- 地域密着型の販売戦略
- 商品価格の適正化
それぞれ詳しく解説します。
家族経営で人件費を抑える
人件費の抑制は経営安定化の重要な要素です。家族での役割分担を明確にし、繁忙期以外はできるだけ外部スタッフに頼らない体制作りが効果的です。
ただし、家族だけで全ての業務をこなすことは体力的な負担が大きいため、適切な休息時間の確保も重要です。
また、家族経営ならではの強みを活かすことも重要です。
例えば、接客担当の家族が常連客と良好な関係を築き、要望や好みを詳しく把握することで、よりパーソナライズされたサービスが提供できます。
加えて、繁忙期には一時的なパートスタッフを雇用する際も、家族が中心となって丁寧な教育をおこなうことで、サービスの質を維持することができます。
ワークライフバランスの観点からも、定休日の設定や営業時間の調整は慎重に検討する必要があります。
廃棄ロスを最小限に抑える工夫
材料の在庫管理と商品の製造量の調整は利益確保の要です。前日予約制の導入や、売れ残りやすい商品の製造量を細かく調整することで、廃棄ロスを最小限に抑えることができます。
また、余った材料を活用した別商品の開発も有効です。
また、IT技術を活用した需要予測も効果的です。
過去の売上データや天候、イベントなどの要因を分析し、より正確な製造量の予測をおこなうことができます。
さらに、賞味期限の近い商品をセット販売したり、タイムセールを実施したりするなど、柔軟な販売戦略も重要です。
食品ロス削減への取り組みは、コスト面だけでなく、環境配慮の観点からも顧客からの支持を得ることができます。
地域密着型の販売戦略
地域のイベントや学校行事に合わせた商品展開が効果的です。地元の特産品を使用したオリジナル商品の開発や、地域の催事への出店など、地域とのつながりを大切にした営業展開が、固定客の獲得につながります。
また、地域の企業や施設とのコラボレーションも効果的です。
例えば、地元のカフェやレストランへの卸販売、結婚式場やホテルとの提携、企業の記念品としての商品開発など、新たな販路を開拓することができます。
さらに、地域の食材を使用した商品は、地産地消の観点からも支持を得やすく、観光客向けの土産物としても人気を集めることができます。
地域のメディアやSNSを活用した情報発信も、認知度向上に効果的です。
商品価格の適正化
原価率と利益率を細かく計算し、適正な価格設定をおこなうことが重要です。特に人気商品は、材料費の変動を考慮しながら、定期的に価格の見直しをおこなう必要があります。
価格設定には、競合店の価格帯も考慮する必要があります。ただし、単純な価格競争は避け、商品の価値や独自性を明確に伝えることで、適正な価格での販売を実現します。
また、商品ラインナップの中で、高価格帯の贅沢商品から手頃な価格の日常商品まで、バランスの取れた構成を心がけることも重要です。
定期的な原価計算と収益分析をおこない、必要に応じて価格改定をおこなうことで、持続可能な経営を実現します。
ケーキ屋を経営するうえで大切なポイント
ケーキ屋を経営するうえで大切なポイントは、以下の5つです。
- さまざまなケーキのデザインを勉強する
- 衛生管理の徹底
- 販売促進とインターネット活用
- 原価管理の徹底
- 独自性の確立
それぞれ詳しく解説します。
さまざまなケーキのデザインを勉強する
流行や季節に合わせたデザインの研究は不可欠です。専門書や業界誌での学習に加え、製菓講習会への参加や、他店の商品研究も重要です。
特に季節の行事や記念日に合わせたデザインは、需要が高く、技術の向上が売上に直結します。
最近では、オンラインでの学習機会も増えています。海外の有名パティシエによるオンライン講座や、SNSでの技術共有など、場所や時間を問わず学べる環境が整っています。
また、職人同士のネットワークづくりも重要です。
他店との情報交換や、共同での勉強会開催などを通じて、技術力の向上を図ることができます。
特に、ウェディングケーキやキャラクターケーキなど、特殊な技術を要する商品については、専門的な研修も必要です。デザインのトレンドは年々変化するため、継続的な学習が欠かせません。
スイーツ・菓子でおすすめのフランチャイズ
衛生管理の徹底
食品を扱う事業者として、徹底した衛生管理は最重要事項です。毎日の清掃や消毒はもちろん、定期的な設備点検や従業員の健康管理も欠かせません。
特に近年は、アレルギー対応の重要性が高まっています。原材料の管理から製造工程、販売時の表示まで、アレルギー物質の混入防止に細心の注意を払う必要があります。
また、新型コロナウイルス対策として、店内の換気や消毒、スタッフの健康管理など、新たな衛生管理項目も加わっています。
定期的な衛生講習会の実施や、マニュアルの更新など、継続的な取り組みが重要です。食品衛生責任者の資格取得や、HACCPに沿った衛生管理の実施も、今後は必須となるでしょう。
販売促進とインターネット活用
ソーシャルメディアを活用した情報発信が重要です。商品写真の投稿や、季節限定商品の告知など、こまめな情報更新で集客につなげることができます。
特にInstagramやTikTokなどの視覚的なSNSは、ケーキ店の販促に効果的です。
商品の製作過程を動画で紹介したり、季節の素材や製法にこだわる点をストーリー性を持って発信したりすることで、ファンの獲得につながります。
また、オンライン予約システムの導入も重要です。スマートフォンから簡単に予約できる仕組みは、特に若い世代の顧客に支持されています。
さらに、メールマガジンやLINE公式アカウントを活用し、常連客とのコミュニケーションを深めることも効果的です。
原価管理の徹底
材料費や光熱費など、すべての経費を細かく記録し分析することが重要です。特に季節商品の原価計算は慎重におこない、適正な利益確保につなげます。
POS(販売時点情報管理)システムの活用も効果的です。商品ごとの売上データや、時間帯別の販売傾向を分析することで、より効率的な製造計画が立てられます。
また、季節による原材料費の変動や、電気・ガス料金の推移なども細かく記録し、コスト削減の機会を見出すことが重要です。
特に、冷蔵・冷凍設備の電力使用量は大きな固定費となるため、省エネ機器への更新や、使用方法の見直しなども検討する必要があります。
独自性の確立
競合店との差別化のため、看板商品の開発は必須です。地域性や店舗の特徴を活かした独自商品が、固定客獲得の鍵となります。
独自性を打ち出す方法として、特定の技法や素材に特化することも効果的です。
例えば、オーガニック素材にこだわる、グルテンフリー商品を専門とする、フルーツの魅力を最大限に活かすなど、明確なコンセプトを持つことで、ターゲット顧客への訴求力が高まります。
また、パッケージデザインやショーケースの演出など、視覚的な独自性も重要です。店舗の雰囲気づくりから接客まで、一貫したブランドイメージを確立することで、競合店との差別化を図ることができます。
まとめ
ケーキ屋の経営には、確かに多くの課題があります。
しかし、家族経営の強みを活かし、地域に根差した営業を展開することで、安定した経営が可能です。
成功の秘訣は、技術力の向上と経営管理の両立にあります。開業前の十分な準備と、開業後の継続的な努力が、長期的な成功につながります。
また、時代の変化に柔軟に対応することも重要です。
例えば、健康志向やエシカル消費の高まりに応じた商品開発、デジタル技術を活用した販売促進、持続可能な経営のための環境配慮など、新しい価値観やニーズへの対応が求められています。
成功している店舗は、伝統的な製菓技術を大切にしながらも、時代に合わせた革新を続けています。
個人経営だからこそできる、きめ細かなサービスと創意工夫が、長期的な成功への鍵となるのです。