飲食店を経営したいが、具体的な手順のイメージが掴めずに二の足を踏んでいる方もいるかと思います。
そこで本記事では、実際に飲食店を経営中の現役オーナーが、開業・経営方法を徹底解説。
飲食店のオーナーになるために必要な資格や仕事内容、年収を上げる方法までご紹介します。
特別な資格は不要!「開業資金」があればOK
飲食店のオーナーになるにあたって、特別な資格やスキルは必須ではありません。
必要なのは「開業資金」と、「こういったお店を持ちたい」という明確なプランだけ。
敢えて言うなら、開業・経営に必要な資金の調達能力、店舗運営に関する知識があるとよいでしょう。
これらは、公的機関や銀行などから融資を受ける、実際に他店舗で働いてみる、といった方法で解決可能です。
オーナーと店長の違いは?
混同されがちですが、オーナーと店長は異なるものです。
【オーナー】
- 店舗の所有者
- 裏方で資金調達や経営方針の決定を行う
【店長】
- 店舗の運営責任者
- 店舗で実際に働く
なお、小さな飲食店では二つの役割を兼務する「オーナー店長」も多いです。
店舗責任者である店長を雇うには相応の給料(人件費)が必要となるため、少しでも利益率を高めるにはオーナー自身が現場に立つことがおすすめ。
飲食店の経営に必要なコストのうち、人件費は大きな割合を占めるからです。
もちろん、飲食店の経営が軌道に乗り、安定して売上を出せるようになったときは、改めて店長職を指名するとよいでしょう。
飲食店のオーナーが取っておきたい資格
飲食店のオーナーが取っておきたい資格として、以下の2つがあります。
食品衛生責任者
飲食店を開業するには、保健所から営業許可を取得しなければなりません。その際、店舗に必ず一人は「食品衛生責任者」を置くことが義務付けられています。
食品衛生責任者は、店舗における食中毒の発生を防ぐなどといった衛生管理の責任者であり、飲食店オーナーを目指す方にとって、知識を得るためにも持っておきたい資格です。
食品衛生責任者は、現役高校生を除く17歳以上であれば学歴や経験は不問、7~8時間の講習を受けることで取得可能です。
食品衛生責任者の講習会は月に1回程度開催されており、費用は1万円程度です。開催日程や費用については自治体によって異なるため、地元の自治体に問い合わせてみてください。
防火管理者
防火管理者とは、店舗火災による被害を防止するために、必要な業務を行える資格者のこと。店舗の収容人数が30人以上の場合にのみ必要です。
防災協会が実施している10時間程度の講習を受講し、修了証を受け取ることで資格を取得できます。費用は7,000〜8,000円程度です。
これも、日程や費用は自治体によって異なるため地元の自治体に問い合わせましょう。
その他オーナーになるために知っておきたい知識
食品衛生責任者と防火管理者は、必ずしもオーナーが取らなければいけない訳ではありません。
店長が取得すれば、オーナーは開業資金の準備だけでOKです。
ただ、自身が「オーナー店長」になる場合は、両方の資格が必要となります。
それ以外にも、オーナーとして持っておくと役に立つ資格がいくつかあります。たとえば以下のような資格です。
- 調理師免許
- 管理栄養士免許
- 経営やビジネスに関する資格(簿記等)
オーナー自身が料理経験があると、メニュー開発にも役立ちます。実際、飲食系の企業で働いて知識やノウハウを蓄えたうえでオーナーになる人も多いです。
また、飲食に関する知識はもちろん、経営学や人材育成、マネジメント、会計などの知識があると経営基盤も築きやすくなります。
飲食店のオーナーの仕事内容
開業資金と資格があれば、誰でも飲食店オーナーになることは可能です。
しかし、オーナーの業務は意外と多く、激務な人も少なくありません。ここでは飲食店オーナーの仕事内容をご紹介します。
1. 店舗のコンセプト設計
どのような店舗を作るのか、コンセプトや設計を行うのはオーナーです。オーナーが設計した内容にもとづいて店舗を作り、店長やスタッフが運営を行います。
コンセプト決めは、飲食店経営において最初にして一番重要な作業です。
何をコンセプトとして誰をターゲットとするのか、ターゲットが訪れやすいエリアはどこかなど、さまざまなことを考えなくてはなりません。
コンセプト設計に失敗すると、せっかく開業しても集客できずに経営が立ち行かないので慎重に検討してください。
2. 資金調達
冒頭でお伝えした通り、資金調達もオーナーの重要な業務です。
飲食店を開業するための資金に加えて、開業からの数ヶ月間を支えられる運転資金も用意する必要があります。
銀行から融資を受けるのか、企業・個人から出資や融資を受けるのか、あるいはクラウドファンディングを行うのか、資金調達の方法はさまざまです。
新規開業する場合は、創業融資を積極的に行っている「日本政策金融公庫」がおすすめ。
銀行と比べて融資が降りやすいので公庫を利用するオーナーも多いです。
3. メニューの最終決定や料金設定
メニューの最終決定もオーナーの仕事。オーナー店長の場合は、メニューの考案から自分で行います。
本当に消費者に美味しいと思ってもらえるメニューなのか、調理工数に見合った原価率なのか、など視点でメニューを最終決定しましょう。
調理に時間がかかる上に原価率が高いと、多く売っても利益が少なくなります(コストパフォーマンスが悪い)。同時にメニューの料金設定も行いましょう。
4. テナントの契約
テナント契約もオーナーの仕事です。飲食店は「どこに出店するか」で売上も大きく異なります。人通りの多いエリアで開業するのが一番ですが、立地が良いと物件取得費と家賃も高額になりやすいです。
また、初期費用はクリアできても、家賃が高すぎて開業から数ヶ月でキャッシュアウトしてしまうケースも少なくありません。
店舗の損益分岐点(赤字から黒字に転換する分岐数字)がいくらになりそうか想定した上で、最適なエリアに店舗を構えましょう。
5. 売上やコストの管理
毎月いくら売上が出ていて、いくらコストがかかっているのかオーナー自身が把握していなければなりません。細かい数字を把握した上で、コストが売上に見合っているのか、利益がきちんと出るような損益分岐点となっているのかを考えます。
もしコストと売上が見合っていないようであれば、人件費や仕入原価などのコスト削減施策を講じましょう。
実際に飲食店オーナーである私も、人件費や仕入原価については常に意識しています。
可能な限りオーナーである自分が現場に立ったり、少しでも安く仕入れられる卸業者さんを見つけたりとコスト削減の工夫をしています。
6. 集客方法の選定
集客方法の選定もオーナーの重要な仕事のひとつ。ビラやチラシ配り、SNS配信、Googleマップの最適化、グルメサイトへの有料掲載、Web広告など集客方法はさまざま。
まずは、コストがかからない「SNS施策」「Googleマップの最適化」がおすすめです。Twitter(現X)やInstagramなど複数のSNSで店舗情報を配信し、Googleマップにも店舗情報を掲載しましょう。口コミが増えるとGoogleマップの検索順位も上がりやすくなります。
7. スタッフの教育
スタッフ教育は店長の仕事ですが、オーナー店長の場合は自分でスタッフ教育を行います。キッチン業務から接客、レジ打ち、オープンと締め作業など教えることはたくさんあります。教え方が厳しいとスタッフが退職してしまう場合も。お互いの信頼関係を築きながら、スタッフが離れないような教育が必要です。
飲食店のオーナーの年収は?
飲食店オーナーの年収は、扱っている食品の種類や店舗数などによって変わりますが、平均は600万円程度といわれています。国税庁の「2021年 民間給与実態統計調査」によると、民間給与の平均年収は433万円という結果に。社会人の一般的な年収と比べると、飲食店オーナーの方が年収が高いといえます。
オーナーと店長が別の場合は、一般的に「売上の10%」がオーナーの取り分
オーナーと店長が別の場合、オーナーの取り分は、一般的には売上の10%といわれています。売上から必要経費を差し引いた金額が、最終的なオーナーの取り分です。
売上原価や人件費を考慮すると、10%より多いと店舗の運転資金や人件費に回せるお金が少なくなります。反対に10%より少ないとオーナー自身の収入が少なくなるため、10%が最適です。
飲食店オーナーが年収を上げる方法
最後に、飲食店オーナーが年収を上げる方法をご紹介します。
1. 複数店舗の展開
店舗を増やすことで売上・利益アップを目指す方法です。1店舗目で大きな利益を得て満足するのでなく、余剰金を2店舗目に使って店舗を増やします。
この手順で新店舗を増やし、軌道に載せることができれば、利益は雪だるま式に増加。オーナーは「所有者」なので、店舗の利益が出るほど年収も上がります。
2. 客単価や最大客数の向上
店舗の売上を伸ばすためには、客単価を上げる、または最大客数を増やす方法が有効です。例えばハンバーガー屋の場合、ポテトなどの相性のよいサイドメニューをセットにして客単価を上げる、テイクアウトやデリバリーに対応するなどの方法が考えられます。
3. 人件費の見直し
人件費は、テナント家賃に並んで大きなコストのひとつ。スタッフ4〜5人で店を回す場合、毎月40〜50万円の人件費が必要です。
営業時間に見合った人材配置ができているのか改めて考えましょう。たとえば、朝10時から営業していて12時までの時間にほとんど人が来ない場合、この2時間は人件費の無駄遣いといえます。
スタッフの雇用を守るという意味では素晴らしいですが、利益を伸ばすという意味では良い策とはいえません。客入りの少ない営業時間をカットしたり、そもそもスタッフの人数を見直したりして、人件費を最適化しましょう。
4. テイクアウトやデリバリーなどの販路拡大
コロナ禍によってテイクアウトやデリバリーを使う人が増えました。アフターコロナの飲食店にとっては、テイクアウトやデリバリーによる販路拡大も売上・利益アップのためには重要な施策です。
テイクアウトやデリバリー導入にかかるコストは以下の通りです。
- 既存メニューをテイクアウト化する
容器代や集客コスト(立て看板など)の費用。テイクアウト用に新しいメニューを開発する場合は別の仕入れコストが発生する
- 出前館やUberEatsなどデリバリーのプラットフォームと契約する
初期費用やサービス利用料が発生する(10〜35%程度)
デリバリーの場合、プラットフォーム側に支払う費用がかかりますが、自社で集客・配送するよりは売上が見込めるしょう。
人件費のロスをなくすためにも、イートイン営業をしながらテイクアウトやデリバリー注文を受けられる体制を作れることが重要です。
まとめ
飲食店のオーナーになるため必要なのは「開業資金」だけ。
オーナーになる難易度は高くありませんが、資金調達だったり、店舗の売上やコストを管理する知識やノウハウだったりと、求められるスキルは多いです。
店舗が軌道に乗れば、一般的な会社員の年収以上の報酬を期待できます。ぜひ本記事の内容を、ご自身の飲食店開業にお役立てください。