カフェという業態は、未経験からでもオープンすることができる、飲食店の中でもハードルの低い業態です。そのためこだわりの詰まったカフェをオープンしたいと考える人も少なくありません。
しかしカフェ業態は参入しやすく、人気が高いからこそ、長く経営を続けていくにはコツが必要です。
そこでこの記事ではカフェで起業するメリットや、オープンまでに必要な準備、押さえておきたいポイントについて解説します。
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カフェの起業・開業が未経験でもできる理由
カフェは未経験からでも起業・開業しやすい業態です。
実務経験がなくてもオープンでき、必要な資格も少ないため、飲食業の未経験者でも参入しやすいのがカフェです。
カフェ業態で起業・開業するメリットとデメリットにはどのようなものがあるか、具体的にみていきます。
<メリット>
- 比較的開業資金が安く済む
- 必要な免許や資格が少ない
<注意点>
- 集客の努力が必要
- 仕入れ先を自分で開拓する必要がある
比較的開業資金が安く済む
飲食店の開業に際しては、設備投資に費用がかかります。しかしカフェは提供するメニューが少ないため、コストのかかる大きな機器がなくてもオープンできます。
また客席スペースも他の飲食業に比べて狭くても運営できるため、コンパクトな店舗規模での営業も可能です。
開業資金が少なくてもオープンできるカフェは、誰もが初めての起業・開業で挑戦しやすい業態といえます。
必要な免許や資格が少ない
カフェで起業・開業するために必要な資格は少ないという特徴があります。店舗設備の条件をクリアできれば、免許を取得してスムーズにカフェをオープンすることが可能です。
例えばコーヒーのスペシャリストであるバリスタの資格や、調理師免許がなくてもカフェを起業・開業できます。
カフェをオープンするために必要な資格と免許は次の3つです。
【カフェの起業・開業に必要な資格と免許】
資格・免許 | 取得方法 |
---|---|
食品衛生責任者資格 | 都道府県の食品衛生協会主催の講習会(6時間程度)を受講 |
飲食店の営業許可 | 事前の相談を経て、必要書類を整えて申請 |
開業(廃業)等届出 | 申請書に記入して提出 |
資格・免許 | 取得・申請場所 |
---|---|
食品衛生責任者資格 | 指定の会場もしくはオンライン |
飲食店の営業許可 | 保健所 |
開業(廃業)等届出 | 税務署 |
資格・免許 | 費用 |
---|---|
食品衛生責任者資格 | 1万2000円程度(教材費込み・税込) |
飲食店の営業許可 | 1万6000円程度(税込) |
開業(廃業)等届出 | 無料 |
注:費用は都道府県により異なります。資格申請に際しては、お住まいの自治体にお尋ねください。
食品衛生責任者資格
食品衛生責任者資格は、カフェを開業する際に必ず必要な資格です。食品衛生責任者資格があれば、カフェ以外の飲食店を開業することもできます。
引用元:食品衛生責任者の資格及び資格の取得方法(東京都福祉保健局)
ただし講習会は事前予約制で、参加希望日にすぐに予約が取れないこともあります。カフェの起業・開業が決まったらすぐに、お住まい先の食品衛生協会のホームページから、講習会の予約を済ませてください。
なお次の資格を持っている場合は、食品衛生責任者資格の取得は免除されます。
引用元:食品衛生責任者の資格及び資格の取得方法(東京都福祉保健局)
飲食店の営業許可
飲食店の営業許可の申請には、時間がかかります。まずカフェの工事を始める前の計画の段階で保健所に出向き、店舗設計の計画に基づいて相談しなければなりません。
保健所による検査をクリアして申請許可がおりれば、カフェを開業できます。
また、下準備も必要です。店舗の工事内容が決定したら、早い段階で保健所に出向いて相談を済ませておくと、オープンまでがスムーズに進みます。
開業(廃業)等届出
個人事業主としてカフェを起業・開業するなら、税務署で開業(廃業)等届出を済ませてください。申請書に必要事項を記入して、お住まい先の税務署の窓口もしくは郵送で提出すれば、申請は完了です。
この時、一緒に「所得税の青色申告承認申請書」を提出すると、確定申告の際に最大65万円の税控除を受けられます。
防火管理者資格
収容人数が30人以上のカフェをオープンする場合は、防火管理者資格が必要です。講習を受講すれば資格を取得できます。申し込みは、インターネットもしくはFAXで行ってください。
防火管理講習には、甲種と乙種があります。
- 甲種:すべての防火対象物で防火管理者に選任できる
- 乙種:防火管理者に選任できる防火対象物が、比較的小規模なものに限られる
画像引用元:防火管理講習・防災管理講習のご案内 令和2年度(一般財団法人日本防火・防災協会)
甲種と乙種のどちらを取得すべきかは、店舗の規模や収容人員といった条件で異なります。カフェの所在地を管轄する消防本部や消防署に問い合わせてご確認ください。
菓子製造業の営業許可
カフェでお菓子やパンを製造してテイクアウトで提供する場合は、菓子製造業の営業許可を取得する必要があります。
飲食業の営業許可は、カフェ店内でのお菓子やパンの提供に対する許可であり、テイクアウトに対応していません。
ただし2018年の営業許可制度の見直しに伴い、一店舗あたりひとつの営業許可を取得していれば営業を可能とする方針が基本となっています。カフェでお菓子やパンを製造、販売することを考えている場合は、保健所に相談のうえ、指示を仰いでください。
カフェをオープンするまでの準備
カフェで起業・開業することが決まってから店舗のオープンまでに準備を具体的に挙げると、次のようになります。
- 開業資金を用意
- 店舗のコンセプト設定
- 店舗を探す
- 店舗設備や備品の検討
- 資格・免許の取得
- メニューの決定
- 座席数の決定
- 仕入れ先の検討
カフェオープンまでにしなければならない準備は多岐にわたりますが、中でも特に重要なのが、2つの計画です。
- 資金の計画
- 経営の計画
資金の計画
資金について考える時は、カフェの開業のために必要な資金だけでなく、開業後の運転資金も含める必要があります。カフェはオープンしたからといって、すぐに利益が出せるわけではありません。安定して集客できるまでには、時間がかかります。
また飲食業の中では開業時の設備投資が比較的少なくて済むカフェでも、500万円程度の開業資金が必要です。
設備機器のリースや借入がある場合、売上の有無を問わず返済しなければなりません。最初から、内装をはじめとする設備投資に大きな資金を投じるのは危険です。
理想のカフェをオープンしたいという思いが先行すれば、カフェの経営が立ち行かなくなる恐れもあります。カフェをオープンするなら、十分な資金の調達と同時に、返済計画も考慮に入れた資金の計画は欠かせません。
またカフェのオープンを視野に入れつつも、テイクアウトの専門店や移動販売から初めて、リスクを最小化するという方法もご検討ください。
カフェをオープンする前にテイクアウト専門店や移動販売からスタートすれば、コスト削減と広告宣伝の両方の効果を得られます。
経営の計画
未経験でカフェをオープンする場合、最も難しいのが経営の計画を立てることです。
カフェ業態は起業・開業のハードルは低いものの、客単価が低く、利益を出しにくい弱点があります。
客単価を上げるためには、さまざまな経営施策を講じなければなりません。経営施策の一例には、次のようなものがあります。
- 集客力アップ
- 価格設定
- 減価率の低減
- 廃棄ロスの低減
- フードメニューの提供
- お代わりによる追加注文させる仕組み
- 回転率を上げる施策
立地がよく人の出入りが多いカフェであれば、常連客を確保するために、回数券を導入するのもよいでしょう。
勉強や仕事の場としてカフェを利用する顧客が多い場合は、安価にお代わりできる仕組みやフードメニューの提供によって、客単価を上げる方法もあります。
カフェを無事オープンさせ、店舗の運営をすることであれば、未経験でも可能です。
しかし経営となると、一筋縄にはいきません。経営の目的は収益化です。顧客の流れや時勢を読んで、収益に繋げるための経営戦略を立て、どの施策に資金を投じるのか、判断する必要があります。
経営判断を誤れば利益が出ず、カフェを続けることが難しくなる可能性も否めません。
未経験からカフェで起業・開業するなら、経営のサポートを受けられる、例えばフランチャイズのような仕組みを活用することをご検討ください。
経営スキルは、すぐに身に付くものではありません。カフェを長く続けていくために欠かせない経営スキルを補うには、外部の仕組みを活用してください。
未経験の人がカフェで起業・開業する2つの方法
カフェ業界未経験の人がカフェをオープンさせる方法は2つあります。
- 個人で起業・開業
- フランチャイズで起業・開業
全くの未経験から個人で起業・開業
個人で起業・開業する最大のメリットは、自分のこだわりや思いを反映させたカフェを実現できる可能性が高い点です。しかし現実的に考えると、かなりの困難を伴うため、慎重に検討しなければなりません。
自分一人でカフェを起業・開業すれば、全てを自分の裁量で行うことができます。苦労を伴っても楽しく取り組めます。
しかし利益を出すためには、夢やこだわりではなく、顧客が何を求めているのかを考えなくてはなりません。理想とかけ離れていても、妥協しなければならない事態も生じます。
利益を出すことを考える場合、検討しなければならない事項には、次のようなものがあります。
- 出店場所
- 店構え
- 店内のデザイン
- メニュー内容
- 商品の価格設定
- 営業日・営業時間
例えばコーヒー豆の焙煎や挽き方、淹れ方にこだわりがあり、通好みのカフェをオープンしたいという理想があるとします。しかし通勤途中の会社員の往来がメインの場所に出店するなら、丁寧に時間をかけて抽出するコーヒーを楽しめるカフェでは、顧客のニーズに応えられません。
また子供連れの主婦層やファミリー層が多い地域で、無機質でモノトーンの内装デザインに、こだわりの輸入家具を随所に配置したカフェはふさわしくありません。
利益を出すには、顧客のニーズを捉えることは必須です。ターゲットになる顧客層の求めている条件にそぐわないのであれば、店主のこだわりや夢については、妥協せざるを得ません。
そして顧客が何を求めているのかを適切に理解し、求められるサービスを提供できるようになるまでには、失敗も付き物です。
個人でカフェをオープンするなら、資金を潤沢に用意し、失敗しながら経営を学んでいく覚悟が必須です。
フランチャイズで起業・開業
個人でも、カフェを展開するフランチャイズ企業と契約して起業・開業することができます。
フランチャイズに加盟すれば、カフェ業態で経験と実績のある本部による、強力なサポートを受けられるのが大きなメリットです。
フランチャイズすることで受けられるサポートの一例には、このようなものがあります。
- 店舗の立地条件調査
- 広告宣伝
- 開業資金の援助
- メニュー開発
- オペレーション研修
- 仕入れ先の紹介
- 経営ノウハウの提供
- 開業後の経営相談
フランチャイズ契約すると、有名店の看板でカフェをオープンすることができます。集客の面で有利です。
またカフェの運営から経営面まで、幅広いサポートを受けられるので、未経験でも安心です。
フランチャイズに伴う弱点は、契約時の加盟金と、毎月のロイヤリティの支払いが必要という点です。しかし収益を挙げられれば、ロイヤリティを支払うこともできます。
ただしロイヤリティの決め方はフランチャイズ本部によって異なります。契約内容を比較検討した上で吟味してください。
高い集客力、運営と経営のサポートに対する投資と考えれば、個人がフランチャイズに加盟してカフェをオープンする方法は、一考の価値があります。
まとめ
未経験からカフェをオープンすることは可能です。しかし夢やこだわりを実現することに重きを置くと、オープンはできても、経営を続けていくことが難しくなります。
カフェのオープンは、スタートに過ぎません。無事にスタートを切ることができても、資金繰りや経営がうまくいかなければ、店を畳まなければならない事態に追い込まれる可能性もあります。
未経験からのカフェ起業を成功させるなら、フランチャイズのように、自分に不足しているスキルを補う仕組みを活用することを、ご検討ください。